ペルチエ効果を利用して冷凍する方法。ペルチエ効果とは、2種の導体を接続して電流を流した場合、電流の方向に応じて接合部に発熱と吸熱を生ずる現象である。この効果を利用した素子をペルチエ素子、電子冷却素子ともいう。
ペルチエ素子はn形とp形の半導体を銅板でつないだもので、n形→銅板→p形方向に電流を流すと、銅板との接合点で吸熱がおこる。発熱は電流の入力、出力部の銅との接合点で生ずる。使用するp形半導体にはビスマス、アンチモン、テルルの合金が使われ、n形半導体にはビスマス、テルル、セレンの合金が用いられている。特性は、合金に加える不純物の種類、量により変動させることができ、この種の合金を適当に組み合わせ積重したものでは、最大60~70℃の温度降下が得られている。
ペルチエ素子は、普通の冷凍装置と異なりモーターもフレオンガスも不要であるため、雑音が少ない、寿命が長い、電流方向を逆にすると発熱素子にもなるので冷温両用装置として使える、温度制御が容易などの特長をもっている。しかし、効率が悪く、素子も高価という欠点もある。
現在、小型であまり吸熱量が要求されない冷温両用の恒温槽、携帯用冷却箱、写真現像用冷却バットのほか、局所冷却にも適する利点を利用して、顕微鏡試料冷却装置、熱電対校正用の氷点装置、露点式湿度計の被検ガス冷却部などが製品化されている。ペルチエ素子を多数交互に組み込んでモジュール化した熱電冷却モジュールも市販されている。この方法は、無重力下でも動作するため宇宙船内で使用され、また遠隔地でも電気制御ができるので無人基地などに使用されている。
[岩田倫典]
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