トムソン効果(読み)とむそんこうか(英語表記)Thomson effect

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トムソン効果」の意味・わかりやすい解説

トムソン効果
とむそんこうか
Thomson effect

導体棒(金属または半導体)の両端のように異なる温度に保って電流を流すとき、ジュール熱のほかに発熱または吸熱のおこる現象。熱電効果の一種で、1851年W・トムソン(後のケルビン卿(きょう))により発見された。電流の向きまたは両端温度の高低を逆にすると発熱・吸熱が逆になる。トムソン効果による発(吸)熱は電流に比例する可逆現象である(ジュール熱は電流の2乗に比例し発熱のみで不可逆現象である)。導体棒の両端の温度差をΔT[K]、電流をI[A]、導体全体の単位時間の発熱量をQ[J/s=W]とすれば、ΔTの小さい範囲では、QIΔTに比例し、
  Q=σIΔT
と表される。比例定数σは[V/K]の単位をもちトムソン係数とよばれる。高温側から低温側へ電流を流すとき発熱する場合を正とする。σは物質により異なる物質定数で、かつ温度にも依存する。導体内の電子が完全に自由であれば、電流の担い手が電子の場合、σは負になるはずだが、実際は正の物質もある。室温では、リチウムを除くアルカリ金属(ナトリウムカリウムルビジウムセシウム)、鉄、白金などでは負であるが、銅、亜鉛などでは正になる。トムソン効果は電流が熱を運ぶことに起因し、トムソン係数σと絶対熱電能ε[V/K]の間には、熱力学から導かれる関係

が存在する。

[宮台朝直]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トムソン効果」の意味・わかりやすい解説

トムソン効果
トムソンこうか
Thomson effect

熱電気現象の1つで,ペルチエ効果とともに熱起電力の原因ともなる。 W.トムソン (ケルビン卿) により発見された。均質の金属や半導体の内部に温度 T勾配があるとき,電流を温度勾配平行に流すと,ジュール熱以外に熱の発生または吸収が起る現象。この効果は可逆的であり,温度勾配と電流の向きを相対的に変えると,熱の発生と吸収とが入替る。温度勾配の方向を x とすれば,電流 I が流れるとき単位時間に単位長さあたり発生する熱量 QQ=σIdT/dx となる。比例定数 σ はトムソン係数と呼ばれ,金属の種類や温度に依存し,正にも負にもなる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android