ペレスガルドス(その他表記)Benito Pérez Galdós

デジタル大辞泉 「ペレスガルドス」の意味・読み・例文・類語

ペレス‐ガルドス(Benito Pérez Galdōs)

[1843~1920]スペイン小説家。19世紀スペイン写実主義代表者一人。共和派代議士として専制政治に対抗したことでも知られる。著作に、19世紀のスペイン史を描いた歴史小説国民挿話」などがある。また、「トリスターナ」「ナサリン」はブニュエルによって映画化された。

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改訂新版 世界大百科事典 「ペレスガルドス」の意味・わかりやすい解説

ペレス・ガルドス
Benito Pérez Galdós
生没年:1843-1920

19世紀スペイン最大の小説家,劇作家マドリード大学で法律を学んだのちジャーナリストになったが,処女作黄金の泉》(1868)で文壇にデビュー。以後バルザックディケンズを師とし,50年以上にわたって書き続け膨大な作品を残した。この作品群の中核をなすのは次の二つのシリーズである。その一つは46冊の小説からなる《国史挿話Episodios Nacionales》(1873-1912)で,これはトラファルガー海戦から王政復古にいたる19世紀スペインの歴史を描いたものであるが,なかでも1冊目の《トラファルガル》と7冊目の《ヘローナ》が傑出している。もう一つのシリーズは《スペイン現代小説集Novelas españolas contemporáneas》と題され20冊余の小説からなるが,ここでは主としてマドリードの中・下層庶民の生活が対象となり,スペイン社会のかかえるさまざまな問題が提示される。1886-87年に書いた宗教的不寛容がもたらす悲劇を扱った《ドニャ・ペルフェクタDoña Perfecta》,不幸な結婚をした中流と下層の2人の女性を主人公とする《フォルトゥナータとハシンタFortunata y Jacinta》などがその代表作である。19世紀のヨーロッパの大作家たちと同じく,芸術的形式の厳密さという点においてはやや欠けるところがあるものの,卓越した観察力と視覚的な描写力を駆使し,19世紀のスペインを小説で描きつくそうとしたガルドスの業績は,バルザックの《人間喜劇》を思わせる。そして,事実彼の作品の多くはバルザック,ディケンズ,トルストイらのそれにも匹敵するものである。
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百科事典マイペディア 「ペレスガルドス」の意味・わかりやすい解説

ペレス・ガルドス

19世紀スペイン最大の小説家,劇作家。ジャーナリストを経た後,《黄金の泉》(1868年)で文壇にデビュー。以後50年以上にわたり膨大な作品を残した。19世紀スペインを小説に描き尽くそうとした彼の業績は,トラファルガーの海戦から王政復古に至るまでの19世紀スペインの歴史を描いた《国民挿話》と,スペイン社会の様々な問題をマドリードの庶民生活を題材に描いた《スペイン現代小説集》の二つに集約される。前者は46冊の小説からなり,中でも《トラファルガル》(1873年)と《ヘローナ》(1874年)が傑出している。一方後者は20冊余りの小説からなり,宗教的不寛容がもたらす悲劇を描いた《ドニャ・ペルフェクタ》(1876年)や階級的葛藤を写実的に描いた《フォルトゥナータとハシンタ》(1887年)などがその代表作である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペレスガルドス」の意味・わかりやすい解説

ペレス・ガルドス
Pérez Galdós, Benito

[生]1843.5.10. カナリア諸島,ラスパルマス
[没]1920.1.4. マドリード
スペインの小説家,劇作家。 1862年にマドリードに出て法律を学んだが,大学を中退,宗教的非寛容に反対し,政治的自由主義を主張して評論家として活躍。トラファルガル海戦からフェルナンド7世の死までを扱った歴史小説『国史挿話』 Episodios nacionales (1873~79) を発表し,またフランス自然主義の影響を受けた小説や,社会問題を扱った戯曲を書いた。 1912年に失明し,失意のうちに死んだ。小説に『フォルトゥナータとハシンタ』 Fortunata y Jacinta (86~87) ,『アンヘル・ゲラ』 Angel Guerra (90~91) など。

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世界大百科事典(旧版)内のペレスガルドスの言及

【スペイン文学】より

…このジャンルの嚆矢となったフェルナン・カバリェロFernán Caballero(1796‐1877)の《かもめ》,P.A.deアラルコンの《三角帽子》,そしてアンダルシアを舞台に,恋と宗教的使命の板ばさみとなった神学生の心の葛藤を描いたJ.バレーラの《ペピータ・ヒメネス》などである。この傾向に属するものの,はるかにスケールが大きく,セルバンテスに次ぐ小説家と見なされているのがB.ペレス・ガルドスである。《国史挿話》という総合的題名のもとに19世紀スペインの歴史に題材を得た46巻におよぶ小説を,また《現代スペイン小説集》という総合的題名のもとに数多くの名作を書いて,スペイン社会がかかえている問題と人間を描いた彼の偉業はバルザックの《人間喜劇》を思わせるものである。…

※「ペレスガルドス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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