ホイッティア(英語表記)John Greenleaf Whittier

改訂新版 世界大百科事典 「ホイッティア」の意味・わかりやすい解説

ホイッティア
John Greenleaf Whittier
生没年:1807-92

アメリカの詩人マサチューセッツ州農家に生まれ,教育も満足に受けなかったが,幼時から読書を好んだ。熱心なクエーカー教徒であり,10代ですでに詩を発表していたが,奴隷制廃止を支持する立場から新聞や雑誌の編集に従事,詩や論説を書くことにも励んだ。とくにD.ウェブスター変節を弾劾する詩《イカボッド》(1850)は有名。しかし南北戦争後はむしろ故郷の自然や神への敬愛の思いを歌うようになり,なかでも《雪ごもり》(1866)は代表作で,ニューイングランドの雪景色を背景に,質朴で温かい農民の家庭が懐かしくもの悲しく描き出されている。むろん詩人自身の郷愁と家族をしのぶ思いがこめられているのだが,同時に戦後急速に都市化していく故郷を嘆く挽歌でもある。宗教詩にもすぐれたものがあり,いかにもホイッティアらしく,教理にとらわれぬ神への無垢な信頼感が表現されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホイッティア」の意味・わかりやすい解説

ホイッティア
Whittier, John Greenleaf

[生]1807.12.17. マサチューセッツ,ヘーバヒル
[没]1892.9.7. マサチューセッツ,ハンプトンフォールズ
アメリカの詩人,奴隷制廃止論者。クェーカー教徒の農家に生れ,子供の頃から R.バーンズ詩集などに親しんで詩作を始めた。種々の雑誌編集にたずさわるかたわら書いた詩,散文を集め,『ニューイングランドの伝説』 Legends of New England (1831) として発表。南北戦争前後からは熱心な奴隷制度の反対者として活発な論陣を張り,『バーバラ・フリチー』 Barbara Frietchie (64) ,『神をほめたたえよ』 Laus Deo! (65) などの詩を残す一方,晩年は熱心なクェーカー教徒として,宗教的な詩を数多く書いた。ほかに,ニューイングランドの農村の生活を歌った有名な長詩『雪に閉ざされて』 Snow-Bound (66) など。

ホイッティア
Whittier

アメリカ合衆国,カリフォルニア州南部の住宅都市ロサンゼルス東方 20kmに位置する。 1887年から入植が始り,各州からクェーカー教徒が移住した。第2次世界大戦前はオレンジクルミの木立ちと酪農場に囲まれた小さな町であったが,ロサンゼルスの発展につれ,その大都市圏に含まれた。北西部のローズヒル記念公園はアメリカ合衆国最大の墓地の一つ。地名は詩人でクェーカー教徒の J.ホイッティアにちなむ。人口7万 7671 (1990) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホイッティア」の意味・わかりやすい解説

ホイッティア
ほいってぃあ
John Greenleaf Whittier
(1807―1892)

アメリカの詩人。マサチューセッツ州のクェーカー教徒の農家に生まれる。独学で子供のころからロバート・バーンズ流の詩を書き、やがて雑誌の編集や地方政治活動に従事、奴隷解放運動にも活躍。反奴隷制詩集『自由の声』(1846)、クェーカーの信仰を反映した『労働讃歌(さんか)』(1850)、奴隷解放時の喜びの詩『神を讃(たた)えよ!』(1865)などが中期の代表作。南北戦争後は、少年時代の田舎(いなか)の生活を追憶する長詩『雪ごもり』(1866)を中心に、ニュー・イングランドの農村をモチーフに、荒削りながら素朴で、風土に根ざした詩作に新境地を開いた。

[池田孝一]

『斎藤光訳『労働讃歌』(『世界名詩集大成第11巻 アメリカ篇』所収・1962・平凡社)』

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百科事典マイペディア 「ホイッティア」の意味・わかりやすい解説

ホイッティア

米国の詩人。クエーカー教徒の農家に生まれ,奴隷解放運動に参加した。冬の農村生活をうたう《雪ごもり》(1866年),奴隷解放を喜ぶ《神を賛えよ》(1865年)で有名。

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