ホシバナモグラ(英語表記)star-nosed mole
Condylura cristata

改訂新版 世界大百科事典 「ホシバナモグラ」の意味・わかりやすい解説

ホシバナモグラ
star-nosed mole
Condylura cristata

湿地にすみ,水に入って餌をとる半ば水生のモグラ。食虫目モグラ科の哺乳類。鼻の先端に22本の,鋭敏な触覚器官として使われるピンクの肉質の突起があり,星状に開くことから星鼻の名がある。毛はビロード状に密生し防水性に富む。体色はこげ茶ないし黒色。目は退化しているが,他のモグラのそれよりも大きい。カナダ南東部からアメリカ合衆国東部に分布する。体長10~13cm,体重40~85g。尾は,モグラ類としては長く6~8cmあり,冬季には脂肪の貯蔵器官として働き,直径が普段の約2倍の14mmにもなる。沼沢地のコケの間などの浅い位置にトンネルを掘り,単独性の傾向の強いモグラ類としては珍しくふつう雌雄のつがいあるいは小さな群れで生活する。トンネルは多くの場合,池や小川に通じており,しばしば水に入って採食する。食物はおもに水生昆虫ミミズ甲殻類など。雌は枯草球形の巣をつくり,3~6月に2~7子を生む。鼻の星状の突起は誕生時の子にも認められる。
モグラ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホシバナモグラ」の意味・わかりやすい解説

ホシバナモグラ
ほしばなもぐら / 星鼻鼹鼠
star-nosed mole
[学] Condylura cristata

哺乳(ほにゅう)綱食虫目モグラ科の動物。カナダ南東部とアメリカ合衆国東部に分布する。頭胴長12~13センチメートル、尾長6.5~8.4センチメートル。体や手足は普通のモグラに似るが、吻(ふん)端に肉質の突起が輪状に並び、尾が長い。目や耳は退化している。背面は黒色に近く、下面はやや淡色。歯式は

で合計44本。森林草原水辺に多く、半地下性で、昼夜を問わず活動する。鼻の星形の肉突起は触覚に優れ、昆虫やミミズを探して食べる。春に通常5、6子を産む。尾は夏に細く、冬に太くなる。

阿部 永]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホシバナモグラ」の意味・わかりやすい解説

ホシバナモグラ
Condylura cristata; star-nosed mole

食虫目モグラ科。体長 12~13cm,尾長7~8cm。鼻孔のまわりに毛がなく,その肉質の部分が星形の突起になっているのでその名がある。他のモグラよりも眼は大きく (ただし視力は弱い) ,尾が長く,前肢が小さい。トンネル生活への適応度が低く,完全な地下生活者ではなく,沼地,草原,森林などさまざまなところにいる。泳ぎがうまい。星形の突起は感覚鋭敏で,土中や水中の食物をあさるのに役立つ。食物は昆虫類,ミミズ,貝,甲殻類など。北アメリカに分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のホシバナモグラの言及

【モグラ(土竜)】より

…腹面には多くの種にオレンジ斑がある。 ヨーロッパ,アジアにヨーロッパモグラ属Talpa,モグラ属Mogera,ミズラモグラ属Euroscaptorなど約10種,北アメリカにトウブモグラ属Scalopus,セイブモグラ属ScapanusホシバナモグラCondylura(イラスト)など8~10種が生息する。これらのモグラ類の分布の中心は,土壌の豊かな温帯である。…

※「ホシバナモグラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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