改訂新版 世界大百科事典 「ホロープ」の意味・わかりやすい解説
ホロープ
kholop
ロシアの奴隷。ロシア最古の法典《ルスカヤ・プラウダ》(11~12世紀)は,ホロープをまさに奴隷として位置づけている。15~16世紀の法典は,本来,ホロープが就いていたクリュチニク(財産管理人)あるいはチウン(執事)の職に自由人が就いてもホロープにならずにすむ道を拡大している。当時の遺言状はホロープの解放を宣してはいるが,財産として遺族に譲渡されるホロープのほうが多かった。ホロープは,家内労働,農耕および手工業にきわめて重要な役割を果たしていた。武具を支給されて主人に随行して従軍した者も少なくなかった。1597年2月のホロープ法令は,すべてのホロープを国家の帳簿に登録させ,それぞれの主人への緊縛を強化するとともに,16世紀に普及してきた債務隷属民を明確にホロープの中に組み入れた。彼らは,〈スルジーラヤ・カバラ〉と呼ばれていた〈労働義務を伴う負債証文〉によって返済までその身柄を債権者=主人に拘束されていたのであるが,いまや負債返却によって自由になる権利を剝奪されたのである。この新しい型の〈カバーリヌイ・ホロープ〉(債務奴隷)は,古い型の〈完全ホロープ〉と異なって,主人の死によって自由を獲得した。ホロープの事実上の農奴化は,以前からもあったが,特に17世紀後半に促進されていった。18世紀に入ると,ピョートル1世はその富国強兵策のなかで,ホロープにも農奴農民と同様に課税することにしたので,ロシアのホロープ制度は自然に〈廃止〉された。
執筆者:石戸谷 重郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報