ボイラー(英語表記)boiler

翻訳|boiler

デジタル大辞泉 「ボイラー」の意味・読み・例文・類語

ボイラー(boiler)

燃料を燃焼させ、その熱エネルギーによって水などを密閉器内で加熱し、高温・高圧の蒸気を得る装置。その蒸気を加熱器蒸気タービンに送り、発電・動力や暖房に利用。汽缶。

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精選版 日本国語大辞典 「ボイラー」の意味・読み・例文・類語

ボイラー

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] boiler )
  2. 給湯などのための、湯をわかす装置。湯わかし釜。
    1. [初出の実例]「電熱をかけるボイラーや」(出典:紋章(1934)〈横光利一〉七)
  3. 密閉した鋼鉄の容器の中で、圧力の高い蒸気を発生させる装置。蒸気機関のかま。蒸気がま。汽鑵(きかん)
    1. [初出の実例]「吐水瓣より吐出したる水を汽鑵(ボイラル)に輸る」(出典:舶用機械学独案内(1881)〈馬場新八・<著者>吉田貞一〉後)

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改訂新版 世界大百科事典 「ボイラー」の意味・わかりやすい解説

ボイラー
boiler

蒸気ボイラーともいう。一般に,液体を加熱して蒸気を発生させる装置をいう。水銀と水の2流体蒸気サイクルに用いられる水銀ボイラー,あるいは纎維工業や化学工業で用いられるダウサーム(ダウ・ケミカル社が開発した有機物伝熱媒体)を蒸発させるボイラーなどの特殊流体ボイラーも含まれるが,通常,ボイラーといえば,水を沸騰させて水蒸気を利用に供するものを指し,汽缶とも称される。その最大の用途は,火力発電所で発電機を駆動している蒸気タービンへの蒸気の供給である。ただし最近の火力発電所のボイラーでは水の臨界圧を超す高圧が採用されており,ボイラー内で水が水蒸気に変わるという相変化(沸騰boil)はもはや起こらず,ボイラーという語義になじまないが,この場合も従来の呼称のまま超臨界圧ボイラーと呼んでいる。その他の用途として,大出力の舶用推進機関には蒸気タービンが適しており,この場合には船にボイラーを搭載する。また,工場で,自家発電を行ったり,乾燥などの処理や操作に必要な作業用蒸気を得る目的でボイラーを設置することが行われる。蒸気の凝縮を利用し,その際放出される潜熱を加熱に用いる方法は,圧力と飽和温度の対応性,配管による輸送の容易さ,また高い伝熱性能などの点できわめて優れた方法といえよう。この身近な例としてスチーム暖房用のボイラーをあげることができる。

ボイラーの主要部は,水および蒸気を入れる鋼鉄製容器(ボイラー主体)と,燃料の燃焼装置および燃焼室との二つである。これらに加えて,蒸気を飽和温度以上に過熱するための過熱器,再熱サイクルとなっている蒸気原動所の場合に必要な再熱器,燃焼ガスの余熱を利用して給水や燃焼装置に送る空気を予熱する節炭器(エコノマイザー)や空気予熱器,通風装置,給水装置,環境対策のための排ガス処理装置などが設けられている。

 ボイラーの性能を代表するのは,供給された燃料が完全燃焼するとき発生する総熱量に対して,有効に水側に伝えられ蒸気を作り出すために使われた熱量の占める割合であって,この値をボイラー効率という。ボイラー効率は小型ボイラーでは50%程度の低い値のものもあるが,大型ボイラーでは90%に達する。

 ボイラーの燃料は古くはもっぱら石炭であったが,今日では石油を主力として石炭と天然ガスが用いられている。小型ボイラーでは燃料自体や燃焼装置の取扱いやすさが問題となるが,ボイラー燃料の大半は火力発電に用いられるものであって,その選択は国のエネルギー原価,ひいては経済にかかわってくる。かつて,第2次世界大戦後には日本の発電用ボイラーの燃料は石炭から石油へ急速に切り替えられたが,1973年,74年の石油危機以降は石炭と天然ガスの使用割合を増す方向で努力がなされている。ボイラーの燃焼装置としては,気体燃料はもとより,液体燃料は噴霧化し,また,石炭は直径50~150μmの微粉炭とすることによって,いずれもバーナーを用いて燃焼させるのがふつうである。この場合,燃料は空気と混合しつつ燃焼室に送り込まれ,すでに燃えている部分から熱を受けて着火し,浮遊状態で燃焼する。

ボイラーの歴史は,ほぼ蒸気機関の発明と蒸気動力利用の進歩に並行している。実用的な蒸気機関の発明は,17世紀末から18世紀初頭,イギリスにおいて炭坑の湧水をくみ上げる必要を背景としてT.セーバリー,T.ニューコメンらによって行われた。これらは大気圧の蒸気を用いそれが凝縮するとき生ずる真空を利用するという方式であったから,その当時のボイラーは単なる銅製の球形に近い容器で湯をわかしていたにすぎない。J.ワットは,それまでの蒸気機関に大改造を加えほぼ後年の蒸気機関に近いものへ仕立て上げた。すなわち,蒸気機関のシリンダーとは独立に復水器を設ける一方,ボイラーを細長い形状とし構造的に強くかつ伝熱面が広くとれるように改良して,大気圧より高い圧力の蒸気をかなり大量に発生できるようにし,熱効率の改善と大型化への道を開いた。ここでいうまでもなく,原動所熱効率は蒸気原動機入口の蒸気の圧力と温度がともに高くなればなるほどよくなる。その後ボイラーは漸次改良されて,19世紀初頭には,後述の丸ボイラーのおもな形式が出そろうようになり,この形式のボイラーはその後本質的な変化なく今日に至っている。一方,水管ボイラーについては,その最初の試みは18世紀末にさかのぼるが,水循環が確実で実用に耐えるものは19世紀中葉に至って実現された。19世紀末には,圧力は14気圧,蒸発量は11t/h程度に達し,蒸気温度は過熱器の採用によって300℃程度に上昇した。20世紀に入ると,蒸気タービンが実用段階に入り新しい蒸気原動機として蒸気機関に置き換わっていったが,おりしも到来した電力文明時代を担うべき発電機駆動用原動機として優れた特性をもっていたことから,蒸気原動所はもっぱら火力発電所として機能するようになった。かくして,その後の電力需要の拡大にあわせて,ボイラーの大容量化と高温・高圧化が飛躍的に進むこととなるのである。水管ボイラーは丸ボイラーに比べて大容量・高性能化への可能性を蔵していたので,20世紀におけるボイラーの発達はもっぱら水管ボイラーにおいてみられる。すなわち,1918年には微粉炭燃焼が成功し,21年には燃焼室壁の一部に水管を配したいわゆる水冷炉壁が採用されている。35年には,水の臨界圧225atmを超す,最高圧力が250atm,蒸気温度540℃,最大蒸発量570t/hのボイラーが作られ,さらに記録的試みとして,54年に,圧力352atm,蒸気温度621℃,蒸発量306t/hのボイラーが作られたことがある。現在,日本で稼動中の新しい火力発電所のうち大型のものについては,250atm,蒸気温度570℃が一般的に採用され,蒸発量は1缶で1000~3000t/hとなっている。
火力発電 →蒸気機関 →蒸気原動所 →蒸気タービン

ボイラーはボイラー本体の構造から丸ボイラーと水管ボイラーとに分類される。

(1)丸ボイラー 丸ボイラーは径の大きいドラムを主体として,その内部に伝熱面をおさめたもので,炉筒ボイラー煙管ボイラー炉筒煙管ボイラー,ドラムの主軸が鉛直におかれた立てボイラーなどがこれに属する。炉筒ボイラーは図1-aのようにドラムを貫いてかなり径の大きい筒(炉筒)を設けたもので,炉筒が1本のものをコルニッシュ・ボイラーといい,これが2本あるものをランカシャー・ボイラーという。炉筒内に火格子燃焼装置(石炭を通常の粒形のまま燃焼させる場合に用いる)を設け,燃焼ガスは,炉筒を出てからドラム外側に煉瓦積みで作られた煙道を通りつつ,ドラムを外側からも加熱するようになっている。煙管ボイラーは,ドラムの水部に燃焼ガス通路となる煙管を多数配したもので,蒸気機関車のボイラーはこの形式のものである。丸ボイラーは,ドラムの大きさから伝熱面積の大きさが制限されるので,大容量にするのは困難である。一般に蒸発量10t/h,圧力10atm程度までの小容量ボイラーとして,暖房用や作業用蒸気を得る目的で広く用いられてきた。しかし,現在では,ドラム内に炉筒と煙管の両方を備えた炉筒煙管ボイラーを除いて,ボイラー効率があまりよくないので新しく製造されることはなくなってきている。

(2)水管ボイラー 水管ボイラーはドラム外に設けた径の小さい水管内で水を蒸発させる。したがって,丸ボイラーに比べて高圧とすることが容易で,かつ,伝熱面積を広くとることも自由にでき,大容量にも適している。ただし,いずれの水管にも確実に水が流れるように注意しないと水管が過熱して破損するおそれがある。また,給水処理をした良質の水を用いて水あかが付着しないようにする必要がある。水管ボイラーは水の流動方式によって,自然循環式,強制循環式および貫流式の3種に分類される。

(a)自然循環式水管ボイラー 図2-aに示すように,ドラムと水管群で水の循環路が形成されるようにする。すなわち,水管内で蒸気が発生するとその管内の気水混合物の密度が低下する。一方,管群の一部を降水管として働くように配してやれば,自然循環力を得ることになる。蒸発管からドラムに戻った気水混合物は,ここで気水分離される。この形式の最初の実用的なものは1867年イギリスで特許を得たセクショナル・ボイラーと呼ばれるもので,第2次大戦前まで広く用いられていた。このボイラーは水管が真直なため自然循環式の中でも直管式と呼ばれる。1912年田熊常吉により考案されたタクマ・ボイラーも直管式であった。直管式は管内部の掃除が便利という長所があったが,給水処理技術の進歩とともに熱膨張に対する順応性のよい曲管式が広く採用されて今日に至っている。図2-b曲管式水管ボイラーの内部構造は燃焼室のまわりの壁面に水管が配され水冷炉壁となっている。火力発電所用のような高圧,大容量のものでは高さが40mを超す大きなものとなり,ボイラー本体は空洞でボイラー本体の伝熱面は燃焼室を囲む水冷炉壁のみで構成されているのが特徴である。このように水冷炉壁の受ける放射伝熱だけで蒸発を行わせるものを放射ボイラーと呼ぶ。高さが大きくなるのは高圧で気液の密度差が少なくなって循環力が減るのを補うためである。

(b)強制循環式水管ボイラー 火力発電所用の大型ボイラーで使用圧力が高く臨界圧に近づいてくると,自然循環式では循環力が不足してくる。これを解決するために降水管の途中に循環ポンプを設けて水循環を行わせるのが強制循環式である。こうすることによって,流動抵抗は大きいが,肉厚が薄くてすむ小径の水管を用いることが可能となるうえ,水管を鉛直でなく自由に配置することも可能となる。ただし,並列する水管に水が一様に供給されるよう水管入口にオリフィスなどの絞りを設ける必要がある。

(c)貫流ボイラー 長い管系だけからなり,一端にポンプで押し込まれた給水が順次,予熱,蒸発,過熱されて,他端から送り出される形式のものである。この形式のボイラーは,ドラムがないので高圧用として好つごうであるが,水が管内で蒸発しきるため,給水にはとくに良質のものを用いねばならない。また,保有水量が少ないため,起動時間が短くてすむが,運転,制御はむずかしい。この形式は1922年イギリスのM.ベンソンにより,また,これと独立に32年スイスのズルツァー社によって製作された。最近では超臨界圧ボイラーが火力発電所で多く採用されるようになったが,この場合にはドラムを用いて気水分離する方式は成立しないので,必然的に貫流ボイラーとなる。また近年,貫流ボイラーは小型ボイラーの分野でも著しく発達し,全自動式のものが工場用,暖房用,病院用,土建用などに広く用いられている。
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百科事典マイペディア 「ボイラー」の意味・わかりやすい解説

ボイラー

汽缶とも。燃料を燃やして水から蒸気を発生させる装置。燃焼装置,燃焼室,ボイラー本体,通風および給水装置からなり,小型のもの以外は過熱器,節炭器,空気予熱器などの伝熱面も備えている。使用目的や蒸発容量に応じて種々の形式をとるが,ボイラー本体の構造から,丸ボイラーと水管ボイラーに大別される。丸ボイラーには多数の煙管を配置した煙管ボイラー,炉筒ボイラー,立てボイラーなどがある。炉筒ボイラーは1〜2本の炉筒がドラムを前後に貫通する形式,立てボイラーはドラムを垂直に立てた形式である。丸ボイラーは一般に暖房用や工場の熱源用として,圧力10atm程度,蒸発量毎時10t程度の小容量ボイラーに使われる。水管ボイラーは水管が外部から熱を受け,水は内部を流動しつつ蒸発する。水の流動方式により自然循環式ボイラー,強制循環式ボイラー,貫流ボイラーに分けられる。一般に使用される自然循環式はドラムと水管および降水管(ふつう燃焼室外に設ける)とで水の循環回路をつくり,水管の一部は燃焼室を取り囲むように炉壁に配置され,発生蒸気は上部ドラムで分離される。強制循環式は降水管の途中に循環ポンプを設けたもの,貫流ボイラーはドラムがなく管系だけで構成されたものである。水管ボイラーは,小型のものは工場の熱源用に,中型のものは舶用などに,大型のものは火力発電所用に使用し,圧力250atm,蒸発量毎時1000〜3000tに達するものが一般的。なお水以外の特殊な流体を用いるものに水銀ボイラーなどがある。
→関連項目ウィルコックス火力発電原子力船大気圧機関田熊常吉超臨界圧ボイラーバブコック放射ボイラー

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栄養・生化学辞典 「ボイラー」の解説

ボイラー

 燃焼熱によって水を蒸気に代える装置.

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