一般に,蒸気相にある物質からその潜熱を奪って液化させる装置をコンデンサーcondenser,または凝縮器というが,凝縮する蒸気が水蒸気の場合,とくに復水器という。復水器の最大の用途は蒸気原動所における蒸気タービンの排気の復水で,復水器を置くことによって,タービン排気を大気圧よりずっと低い復水器真空で引くことができるうえ,復水はきわめて良質の蒸留水であるのでボイラー用給水として循環使用することができる。放熱量が巨大である(60万kW級の蒸気タービンの復水量は1時間当り約1000tである)ことから,復水器の冷却用流体としては海水や河川の水を用いるのがふつうで,原動所の立地条件によってはまれに空冷式のものもある。日本で得られる冷却水温は15~20℃程度であるが,伝熱抵抗が加わる結果,蒸気原動所の復水器真空の標準は絶対圧(完全真空状態を基準として測る圧力)0.05atm(33℃の水の蒸気圧に相当)とされている。
復水器の形式には,水蒸気と冷却水とが直接接触する混合復水器と,水蒸気と冷却用流体とが金属面を介して熱交換を行う表面復水器の2形式がある。前者に属するもののうち,図1はバロメトリックコンデンサーと呼ばれるもので,高所に設置して混合器部分の真空度が排水管内にたまる水柱の重量とのつりあいで得られるようになっている。また,図2はエゼクターコンデンサーを示す。地熱発電所では復水の回収の必要がないので混合復水器を用いる場合もあるが,一般の蒸気原動所では表面復水器が用いられる。表面復水器は図3に示すような構造をもち,胴内には直径20mm程度の復水管と呼ばれる黄銅(青銅,白銅,チタンも用いられる)製の管が多数水平に配されている。その外面で水蒸気が凝縮し,その際放出される潜熱は管壁を通して管内を流れる冷却水に伝えられる。
復水器でもっとも注意を要するのは,蒸気中に含まれている微量の空気が凝縮することなくしだいに復水器中に蓄積されて伝熱を阻害するようになることに対する配慮である。そこで,器内の蒸気には適当な流速をもたせ,蒸気の凝縮に伴って復水管のまわりに吸い寄せられてくる不凝縮ガスを吹き飛ばすようにしている。また器内の復水管の配置をくふうし,蒸気が器内のどの場所でもできるだけ一様な速度で流れ,凝縮につれて体積減少した蒸気流が最終的に1点に集中するようにする。そしてこの部分に抽気孔を設け,不凝縮ガス濃度の高くなった蒸気を抽気ポンプで抽出する。バロメトリックコンデンサーの場合は冷却水に溶け込んでいるガスも放出されるので,不凝縮ガスの抽気はさらに重要となり,図1では蒸気エゼクターを2段設けて抽気を行っている。
復水器の付属品としては,抽気ポンプのほか,冷却水を送るための循環ポンプ,復水器底部にたまった復水を復水器真空からくみ出すための復水ポンプが必要である。
執筆者:田中 宏明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
水蒸気(蒸気)を冷却して水に戻す装置。とくに蒸気機関では二つの目的で使用される。一つは機関から排出された蒸気を水に戻すことによって、圧力を大気圧以下に下げることができ、機関出力が著しく大きくなるためである。もう一つは冷却して水になった蒸気(復水)は、蒸留水と同様にたいへん良質の水となるため、これを回収して再利用するのに使われる。復水器は本体と空気抽出器、復水ポンプ、冷却ポンプからなる。本体には蒸気と冷却水が直接接触しない表面復水器と、直接接触混合する形式があるが、蒸気機関ではほとんど表面復水器が用いられる。表面復水器は蒸気の入る胴と、その中に多数の冷却水の通る管を設けたもので、蒸気は冷却管の表面で水に戻り、復水だめに集められる。復水器内部が蒸気だけであれば、冷却水の温度が30℃程度で、胴内の圧力はほとんど真空(0.04気圧程度)になる。しかし、もし空気が入っていると圧力が低くならず、蒸気機関の出力も大きくならない。そのために空気抽出器で絶えず復水器内の空気などの不純ガスを取り除く。復水だめに集められた復水は復水ポンプでボイラーに戻される。
[中山秀太郎]
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