ボコ・ハラム(読み)ボコハラム

百科事典マイペディア 「ボコ・ハラム」の意味・わかりやすい解説

ボコ・ハラム

ナイジェリアイスラム過激派組織。正式名称は〈宣教及びジハードを手にしたスンニ派イスラム教徒としてふさわしき者たち〉。ボコ・ハラムとは〈西洋の教育は罪〉を意味する。西洋の教育のみならず西洋文明全体を敵視している。ナイジェリアのタリバーンともいわれ,2002年にナイジェリア北部各州に厳格なイスラム法による統治の導入を目指して結成され,武装闘争を展開,その過程でチャドなどから民兵を吸収,アル・カーイダと連携して組織を拡大した。創設者はモハメド・ユスフといわれている。2013年ナイジェリアのジョナサン大統領は,ボコ・ハラムの攻撃は〈テロリスト反乱〉であるとして非常事態宣言を発令した。アメリカ政府は,ボコ・ハラムとアンサルというボコ・ハラムの派生組織をテロ組織に指定した。ボコ・ハラムは主として学校,大学をターゲットに襲撃事件を繰り返し,2014年4月にはボルノ州の学生寮を襲撃し女子生徒240人を拉致。女子生徒らを〈奴隷として売り飛ばす〉との犯行声明とビデオ映像を公開し,世界に衝撃を与えた。ジョナサン大統領は,ボコ・ハラムに対し対テロ全面戦争を行う決意を表明したが,10月にはナイジェリア政府がボコ・ハラムとの間で,停戦と拉致された女子生徒を解放する合意成立と発表した。しかし,戦闘は継続し女子生徒も解放されなかった。その時の指導者であるアブバカル・シェカウは,既に女子生徒はイスラム教に改宗した上で結婚させたと発表している。その後も襲撃,虐殺自爆テロを繰り返し,2015年にはISに忠誠を誓って連携する動きを見せ,アフリカ諸国のみならず国際社会全体の大きな脅威となりつつある。
→関連項目ナイジェリア

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

知恵蔵 「ボコ・ハラム」の解説

ボコ・ハラム

ナイジェリア北部に拠点を置くイスラム過激派組織。「ボコ」は現地ハウサ語で「西洋式教育」の意味、「ハラム」はアラビア語の借用で、イスラム教の「禁忌・罪」を意味する。2002年、モハメド・ユスフがチャドやニジェールに近い北東部の都市マイドゥグリで結成、ナイジェリアの「タリバン」と自称した。別称は「宣教及びジハード(聖戦)を手にしたスンニ派イスラム教徒としてふさわしき者たち」。
創設者のユスフは09年7月に殺害されたが、1年後(10年7月)にアブバカル・シェカウが新しい指導者になると、暴力による破壊行動を激化させ、警察署・刑務所・国連施設やキリスト教系施設への襲撃、爆破テロを繰り返した。また「ボコ・ハラム」の過激なイスラム復興主義に反対するモスクやイスラム神学校も襲撃している。
12年には、テロ行為への取り締まりを強化したジョナサン政権の打倒を宣言。14年4月には、北東部ポルノ州の学校から250人以上の女子学生を拉致、「強制結婚させるか、奴隷として売り飛ばす」という脅迫映像を流し、世界中に大きな衝撃を与えた。この女学生拉致事件の翌5月には、国連安保理の制裁委員会が「アル・カイーダ」関連のテロ組織と指定し、資産凍結や武器・資金の提供などを禁止する制裁対象リストに加えた。
西洋型の民主主義やキリスト教を否定し、シャリア(イスラム法)に基づくイスラム国家を樹立するのが目的とされ、隣国ニジェールにも勢力を広げる「イスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ組織(AQIM)」との連携も指摘されているが、根底には南北間の経済格差、すなわち経済発展から取り残された北部ハウサ人の南部(中央政府)に対する強い不満があると見られる。

(大迫秀樹  フリー編集者 / 2014年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

知恵蔵mini 「ボコ・ハラム」の解説

ボコ・ハラム

ナイジェリア国内を主な活動地域とするイスラム過激派組織。「ボコ・ハラム」とは同国の現地語で「西洋の教育は罪」の意。別称は「宣教及びジハードを手にしたスンニ派イスラム教徒としてふさわしき者たち」。数百人のメンバーを擁するとされる。2002年にモハメド・ユスフによって結成されて以来、キリスト教、西洋式教育などの西洋文化や民主主義の否定、ナイジェリア政府の打倒やイスラム法施行を主張し、数々のテロを引き起こしている。09年にユスフが警察に射殺されると、10年にアブバカル・シェカウが新指導者に就任。以来、同組織の活動はより過激化し、14年にはナイジェリア北部で大規模な女子生徒拉致事件を引き起こして国際的な批判を浴びている。

(2014-5-15)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

デジタル大辞泉プラス 「ボコ・ハラム」の解説

ボコ・ハラム

《Boko Haram》2002年頃設立とされるナイジェリアのスンニ派イスラム過激組織。ボコは現地ハウサ語で「西洋式教育」、ハラムはアラビア語で「禁忌」を意味し、キリスト教や西洋式の教育・文化の否定と、ナイジェリア政府の打倒、イスラム法施行などを主張する。「ナイジェリアのタリバン」を自称し、キリスト教徒や関連施設への襲撃、同組織に批判的なイスラム神学校などへの攻撃のほか、ナイジェリア女子生徒拉致事件(2014年、200人以上が行方不明)をはじめとする大規模な誘拐事件や住民虐殺を実行。2014年8月には、実効支配している北東部でのカリフ制国家の樹立を一方的に宣言している(国際的には未承認)。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

今日のキーワード

カスハラ

カスタマー(顧客)とハラスメント(嫌がらせ)を組み合わせた造語「カスタマーハラスメント」の略称。顧客や取引先が過剰な要求をしたり、商品やサービスに不当な言いがかりを付けたりする悪質な行為を指す。従業...

カスハラの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android