ボルジア家(読み)ボルジアけ(その他表記)Borgia

改訂新版 世界大百科事典 「ボルジア家」の意味・わかりやすい解説

ボルジア家 (ボルジアけ)
Borgia

15~16世紀のイタリア政治史を飾る名門。スペインのアラゴン地方の町ボルハ(イタリア語化してボルジアとなる)の出自で,13世紀前半アラゴン王のレコンキスタ軍の騎士やバレンシア地方の貴族のなかにその名を見いだす。最初にイタリアに足を踏み入れたのはアルフォンソ(1378-1458)で,コンスタンティノープル陥落前後のヨーロッパの危機の時代に,バレンシア司教,アラゴン王顧問官,枢機卿に順次昇進し,イタリア入国12年目の1455年教皇位(カリストゥス3世)につく。このときすでに77歳で多くをなしえなかった。その後同家の地位を上昇させたのは彼の甥ロドリゴ(1431-1503)で,彼が92年に教皇アレクサンデル6世となったときには同家はほかに4人の枢機卿を擁し,絶頂期を迎える。新大陸発見後のスペイン・ポルトガル間の世界分割の調停サボナローラの破門宣告,フランス軍のイタリア侵入からのローマの救済などのヨーロッパ外交で手腕を発揮し,ラファエロ,ミケランジェロやブラマンテに絵や建築の仕事を与え,ローマのルネサンス文化を確立させた。同教皇はチェーザレ(C.ボルジア),ルクレツィア(1480-1519)などの庶子を含め,教皇となる人にはふさわしくないほど多くの子どもをもち,権謀術数をめぐらして家の繁栄と教会国家の再建を目ざした。ロマーニャマルケ,ウンブリア,トスカナなどの地域に支配を拡大していった。同家はイタリアでは外国人とみられたが,多くの子どもたちはイタリアの上流階級の家と縁組みした。なかでも父に溺愛された美貌のルクレツィアはプロチダ伯との婚約解消後,スフォルツァ家,ナポリ王の庶子ビッシェリエ公(チェーザレの使者に殺害さる),フェラーラ公のエステ家へと3度政略結婚を強いられた。彼女については父や兄の毒殺計画への荷担や近親相姦の悪徳の諸業が語られるが,根拠はない。むしろフェラーラ公妃として芸術愛好やファッションへの関心とともに,慈善家であったことが土地の人々にはよく知られている。ヨーロッパの新時代への移行期に急上昇してきたボルジア家はアレクサンデル6世とチェーザレの死でもって権勢の世界から姿を消すが,なお若干の光明がスペインで生活したガンディア公の家系に保持される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボルジア家」の意味・わかりやすい解説

ボルジア家
ボルジアけ
Borgia

スペインのバレンシア近郊ヤティバ出身のイタリア名門貴族の家系。 15世紀末から 16世紀初めのイタリアに大きな影響を及ぼした。一門のアルフォンソ (1378~1458) がバレンシア司教,枢機卿を経て教皇 (カリクスツス3世〈在位 55~58〉) に選ばれたことから家系の隆盛が始った。彼は教皇即位と同時に一族をスペインから呼び寄せて教会の要職につけた。そのなかには教会軍総司令官となったペドロ・ルイスや枢機卿に任命されたロドリーゴ (31~1503) らがいた。ロドリーゴは 1492年教皇に選出されてアレクサンデル6世 (在位 1492~1503) となり,彼もまた一族を要職につけた。彼の息子フアン (→ボルジア,J.) はスペインのガンディア公に,チェーザレ (→ボルジア,C.) は数々の教会職を歴任したあとロマーニャ公となり,娘のルクレツィア (→ボルジア,L.) は政略結婚を重ねて最後にはエステ家のフェララ公アルフォンソの妻となり,末子ホフレはアラゴン家の庶出の王女サンチャと結婚した。このようにボルジア家はロドリーゴが教皇在任中に最盛期を迎えたが,彼が 1503年に死亡したあと家門は急速に没落した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ボルジア家」の解説

ボルジァ家(ボルジァけ)
Borgia[イタリア],Borja[スペイン]

スペイン出身。バレンシア司教(のち枢機卿)アルフォンソは教皇カリクトゥス3世(在位1455~58)となり,その甥ロドリゴが教皇アレクサンデル6世となる。チェーザレ・ボルジァやルクレツィアを子に持ち,15~16世紀イタリアの政治史を彩った。

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