筆記具の一種。ペン先部に装置した小鋼球(ボール)の回転により軸内のインキを引き出し、書写する仕組みとなっている。1943年に新聞の校正係をしていたハンガリー人のラディスラオ・ビロが開発したのに始まるが、1944年にそれよりもさらに改良されたものがアメリカで発売され、日本へは第二次世界大戦後、進駐軍兵士によって紹介された。粘性の油溶性インキを用いる油性ボールペンが一般的であるが、現在は水性インキを用いた水性ボールペンも出ている。
油性ボールペンは、軸内のパイプに入った油溶性インキをボールの回転によって導き出す方式で、鉛筆型のものと携帯用のものとがある。普通、携帯用は中芯(しん)交換式になっているが、鉛筆型には使い捨て方式のものもある。また筆記幅はボール径によって決まり、0.5ミリ、0.7ミリ、0.9ミリ、1.0ミリなどの種類がある。このほか、上向きでも筆記できるようにした「エアペン」(圧縮ガスによりつねにインキを前に押し出しているため)や、書いたあと消しゴムで消すことができる特殊インキを用いたものもある。
水性ボールペンは、サインペンと油性ボールペンの中間的構造の製品で、サインペンと同質の水溶性インキを用いており、多くは軸内のフェルト状の粗毛にしみ込ませたインキを、誘導芯によって先端のボールまで毛細管作用により引き出す。インキをじかに貯蔵したものもある。力を入れずに軽く書け、油性のように筆記中ペン先部にインキがたまるような現象がないのが特長であるが、トレーシングペーパーのように表面に水分がのりにくいものには、うまく筆跡が得られない場合がある。
[野沢松男]
アメリカのロードJohn Laudが板や厚紙に印をつけるものとして1888年に考案したものが原型とされるが,ハンガリー出身のビロLazlo Biroが改良を加え,1943年に筆記具として完成させた。44年アメリカのエバーシャープ社がビロの特許を買って商品化し,以後急速に普及した。構造は先端のボールが回転することにより,軸内からインキを紙に転写するというもので,粗面でもスムーズに書ける。日本には第2次世界大戦後もたらされた。簡便で複写伝票にも適するボールペンは,とくに55年ごろから叫ばれはじめた事務合理化運動とあいまって定着していった。加工精度やインキの品質が筆記性能に微妙に影響するため,当初はインキのかすれ,にじみ,ボテ落ちがさけられず,また,高湿で変化の多い気候の日本ではインキが安定しにくく,長期保存の公文書などには不適とされてきた。その後の改良で82年からは司法試験での使用も許可になった。通常は油性インキを用いたものをさすが,1966年に水性インキを採用した〈水性ボールペン〉が日本で開発され,ボールペン市場における比率を伸ばしつつある。
執筆者:永田 桂子
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