マイマイガ(読み)まいまいが(英語表記)gypsy moth

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マイマイガ」の意味・わかりやすい解説

マイマイガ
まいまいが / 舞々蛾
gypsy moth
[学] Lymantria dispar

昆虫綱鱗翅(りんし)目ドクガ科に属するガ。はねの開張、雄は40~55ミリメートル、雌は60~80ミリメートル。触角櫛歯(くしば)状であるが、雄のほうが枝が長い。雄のはねは丸みをもち、一般に褐色あるいは黒みを帯びるが、雌のはねは細長く、灰黄白色で、雌雄の大きさや色彩の差は著しい。ほとんど北半球全域に分布し、日本では北海道から沖縄本島にまで生息範囲が広く、地理的変異もみられる。夏に成虫が羽化し、雄は日中活発に飛び回るが、大形で太い腹中に卵を内蔵している雌は、幼虫の食樹付近に静止し、交尾のため飛来する雄を待っている。卵で越冬し、春に孵化(ふか)した幼虫は、バラ科、ブナ科など多くの植物の葉を食べ、しばしば多発して、山林、果樹園、庭園に大害を与える。弱齢幼虫は、しばしば糸を吐いて垂下する習性をもつところから、ブランコケムシとよばれる。北アメリカ大陸には、100年ほど前にヨーロッパから移入され、全土に広がって重要な森林害虫となってしまった。日本産は、北海道のものが一般に小形で淡色本州四国九州のものは濃色、ことに雄は黒褐色であるが、四国、九州の南端部では雄の後翅がすこし白みを帯び、種子島(たねがしま)や屋久島(やくしま)では、雄の後翅の大部分が純白となる。沖縄本島産はもっとも大形で、前翅まで白くなり、雌は薄いクリーム色となる。琉球(りゅうきゅう)諸島では、幼虫がモクマオウにも寄生することが知られている。

[井上 寛]


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百科事典マイペディア 「マイマイガ」の意味・わかりやすい解説

マイマイガ

鱗翅(りんし)目ドクガ科の一種。日本全土,中国,シベリアを経てヨーロッパに広く分布。雄は開張50mm内外,暗褐色,暖地のものは灰白色を帯びる。雌は開張80mm内外,黄褐色を帯びた白色。幼虫はよく糸を吐いて下垂するのでブランコケムシと称され,カキ,リンゴ,ナシなど各種植物の葉を食う害虫。成虫は夏に現れ,雄は昼間上下に舞うような飛び方をするのでこの名がある。卵で越冬する。
→関連項目ゴールトシュミットドクガ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マイマイガ」の意味・わかりやすい解説

マイマイガ
Lymantria dispar; gypsy moth

鱗翅目ドクガ科。前翅長は雄 24~32mm,雌 35~45mm。雌雄で翅形や色彩が著しく異なる。雄は小型,全体黒褐色で,翅には黒色の斑紋があり,触角は櫛状。雌は大型で体は太く,全体淡灰色で翅にわずかな黒色斑があり,触角の櫛歯はきわめて短い。成虫は夏季出現する。雄は昼間活動し,ぐるぐる舞うように飛ぶのでその名がある。幼虫は各種の広葉樹を食害する大害虫で,ぶらんこ毛虫,ハンノキ毛虫と呼ばれている。ユーラシア大陸に広く分布し,多数の亜種に分けられていて,本州,四国,九州に産するものは L. d. japonicaという。北アメリカへはヨーロッパ産のものが入って定着し,大害虫となっている。

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知恵蔵mini 「マイマイガ」の解説

マイマイガ

チョウ目・ドクガ科に属する蛾(ガ)の一種。ヨーロッパ・アフリカ・アジアなどに広く分布する。かたまり状の卵(卵塊)で越冬し、日本では4月頃にふ化、体長2~3ミリの幼虫(毛虫)になる。ブランコケムシとも呼ばれる幼虫時代の約2カ月間に樹木や草花の葉を食するため、森林病害虫等防除法施行令により「森林病害虫」に定められている。また幼虫時代の体毛には毒があり、触ると赤く腫れる・かゆくなるといった症状が出ることがある。7月頃にさなぎから羽化して、薄茶色で体長2~4センチメートルの成虫となる。

(2015-7-10)

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