マナー(英語表記)manor

翻訳|manor

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

マナー
manor

イギリス中世の荘園で,封建領主の所領経営の単位。ドイツのグルントヘルシャフト,フランスのセニューリーなどに対応する。1村落に数個のマナーが存在したり,数村落が1マナーをなすなどの例が多いが,典型的な形態は1村落が1マナーを形成。アングロ・サクソン時代末期の 10世紀頃から成立し,以後広く普及,12~13世紀が最盛期。マナーの耕地は領主直営地と農民保有地とからなり,農民 (農奴) は領主直営地における労働をもって地代納付 (労働地代,賦役) を行なう古典荘園が本来の形態であるが,12世紀以降,貨幣経済の浸透に伴い,領主は直営地を分割,農民保有地となし,貨幣地代を収奪する形態が徐々に一般化した。その結果,農奴の経済的・社会的上昇を招き,14~15世紀にはマナー制度は漸次解体するにいたった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディアの解説

マナー

中世イングランドにおける封建領主の土地経営の単位。ドイツのグルントヘルシャフトやフランスのセニュリに対応する。1つの村落に数個のマナーが存在したり,またはいくつかの村落が1つのマナーを形作ったり,その広さや内容は地域と時代において大きな偏差がある。アングロ・サクソン時代の末期の10世紀ごろに成立し,12・13世紀にその最盛期を迎えたとされる。マナーの耕地は通常,領主直営地と農民保有地に分かれ,直接耕作を担当する農民は農奴とよばれ,領主直営地を耕作することによって地代を払う(賦役,労働地代)形態をとるものを古典荘園とよぶ。しかし12世紀以降貨幣経済の浸透とともに,領主は直営地を分割して農民に保有させ,貨幣による地代をとることが一般化した。これにより農民の経済的な地位が上昇して,15世紀になるとマナーはしだいに解体した。→荘園

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版の解説

マナー【manor】

中世イングランドの領主の所領。ドイツの〈グルントヘルシャフト〉,フランスの〈セニュリseigneurie〉とともに〈荘園〉の訳語をあてることがある。典型的なマナーは領主直営地と農民保有地から成り,また農民の社会的集団の単位である村落共同体をその基礎としている。領主はマナー裁判所を有し,また自分の親族や農民のために教会を建立してその司祭を司教に推挙する権利をもっていた。しかし以上のような典型的な姿をもたないマナーも多数存在した。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

世界大百科事典内のマナーの言及

【荘園】より

… 第1は荘園を私的大土地所有の形態とみて,その内部構造を究明しようとする流れで,近代史学史の主流をなし,中田薫朝河貫一,牧健二らにより,西欧との比較を通して確立した見方である。ただ中田薫が荘園領主権を公法上の支配権とし,朝河貫一が荘園とマナーの相違を強調,牧健二が(しき)の官職的・公法的側面に着目するなど,西欧の封建制との違いにそれぞれ注目していることは見のがせない。その後,竹内理三,今井林太郎らは活発な個別荘園研究を背景に,荘官・荘民,年貢公事(くじ)の実態など,内部構造の解明を進めたが,土地公有制をとる律令制との対立の中で荘園をとらえる一方,地頭・守護などの武士に荘園を変質・崩壊させる力を見いだす点では共通した見方に立ち,荘園整理令下地中分(したじちゆうぶん),半済(はんぜい)などもその観点から追究した。…

【封建制度】より

…(b)この意味での封建制度は,世界中どこにもみられる普遍的現象である。(c)ヨーロッパの学界では,この意味では領主制マナーグルントヘルシャフト,セニュリseigneurieの語(いずれも日本では〈荘園(制)〉と訳されているが,日本の荘園と同一視できるかは問題である)が用いられ,フューダリズムの語は用いられないのが通例である。(d)時代的には,この意味の封建制度は,奴隷制の崩壊から近代市民社会の成立までの全時期を包括するが,レーン制の意味での封建制度は,8~9世紀から13世紀までみられるにすぎない。…

【マナー・ハウス】より

…中世イギリスの荘園(マナー)領主の邸宅をいう。城郭に比して,防備的性格の希薄なものをさし,イギリスは大陸諸国に比べて治安が良好だったため,13世紀から15世紀にかけての遺構が多数見られる。…

※「マナー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

エクストリーム出社

「エクストリーム出社」とは、早朝から観光、海水浴、登山などの遊びやレジャーを楽しんだ後、定刻までに出社する新しい通勤スタイルのことです。日本エクストリーム出社協会では、これを“エクストリーム(「過激な...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

マナーの関連情報