マレー半島とスマトラ島との間の海峡。北西から南東につながる細長い海峡で、長さ約900キロメートル、幅は狭い所では65キロメートルにすぎない。スンダ陸棚上にあるため水深は浅く、120メートル以下の部分が多い。とくに南東部は60メートル以下で、島も多く、航行には注意が必要である。海流は年間を通じて南東から北西に流れる。太平洋より南シナ海を通ってインド洋へ達する航路にあたり、古来、東西貿易の海上の大道であった。とくに1869年のスエズ運河開通後は、それまでスンダ海峡を経由していた船舶も、ほとんどがこの海峡を利用するようになった。現在、世界で船舶航行のもっとも多い海域の一つで、日本と中東を往復するタンカーなどで混雑する。沿岸にはペナン、マラッカ、ポート・スウェッテナム、シンガポールなどの港湾都市がある。これらの港湾都市のなかでは現在、シンガポールが最大の港だが、帆船時代はマラッカ(Melaka)が栄え、15世紀にはマラッカ王国の主要貿易港であった。その後、ポルトガル、オランダ、イギリスの支配を受けた関係もあって、マラッカ市内には中国人、マレー人、西欧系白人、日本人などさまざまな人種が住み、寺院もマレー最古のモスクがあるほか、仏教寺院、ヒンドゥー教寺院、キリスト教寺院など多種多彩である。今後は観光都市としての比重も増すであろう。
[大矢雅彦]
海峡沿岸国の領海が12海里に拡大されたため、従来公海として自由な航行に開放されてきた海峡も領海化された。マラッカ海峡は、国連海洋法条約のもとで国際海峡とされ、外国の艦船および航空機は、国際法の規則と沿岸国の法令に従って、海峡を通過するための通航権を認められた。沿岸3国は、船舶の輻輳(ふくそう)する海峡として、航路帯および分離通航帯を設定し、通航船舶に対しその遵守(じゅんしゅ)を要求している。またとくにタンカーの座礁事故を防止するため、船底と海底との間に一定の距離を保つ、いわゆるUKC(Under Keeping Clearance)方式が採用されている。
[中村 洸]
東南アジア,マレー半島とスマトラ島との間の海峡。全長約800km,幅40~350km。南西モンスーンの季節に強風が吹くこともあるが,通常は波が穏やかで古くから東西貿易の主要航路であった。1869年のスエズ運河開通で重要性はさらに高まり,マレー半島側の鉱業,農業の大規模開発を促し,ペナン,シンガポール両港に繁栄をもたらした。現在,海峡は世界で船舶航行の最も多い海域の一つである。通過する貨物で最も多いのは中東産の石油とその製品で,行先の第1位は日本である。航路上にあるシンガポールは大石油精製基地となり,1980年代には日本系企業の石油化学工場の建設が進められた。シンガポールのすぐ南にあるインドネシアのバタム島でも,石油工業の開発が始まった。一方,石油タンカーの大型化は,浅瀬が多く航行可能な水路が狭いマラッカ海峡経由を避けて,スマトラ,ジャワ両島の南側を通る航路を新設させた。これによって,海峡交通の混雑に多少の歯止めがかかると期待されている。
執筆者:太田 勇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新