改訂新版 世界大百科事典 「マルハ」の意味・わかりやすい解説
マルハ[株]
日本最大の水産会社。中部(なかべ)幾次郎が1880年に兵庫県明石に設立した鮮魚仲買運搬業の林兼商店がその前身。1905年には日本初の石油発動機付鮮魚運搬船〈新生丸〉(12トン,速力6ノット)を建造し,国内のみならず朝鮮からも鮮魚を運搬した。その後二十数隻の運搬船を所有したが,16年に漁業に進出し18年には土佐捕鯨(1907設立)を買収し,その後の重要部門となる捕鯨業に進出した。24年には下関に冷蔵庫を完成させた。この間1916年には漁船発動機などの製造・修理を行う中部鉄工所(現,林兼造船)を設立した。24年に個人商店林兼商店を改組し,林兼漁業(株),林兼冷蔵(株),(株)林兼商店の3社を設立,25年この3社が統合され(株)林兼商店となった。32年北洋漁業への進出を図ったが政府の北洋漁業大合同の方針に阻まれたため,南氷洋捕鯨に力を注いだ。36年日本初の国際捕鯨母船〈日新丸〉を建造,37年に完成した〈第二日新丸〉と二つの船団で南氷洋捕鯨を展開した。第2次大戦の勃発により水産統制令が実施され,(株)林兼商店の事業は43年設立の西大洋漁業統制(株)に統合された。
敗戦後45年に社名を西大洋漁業(株)を経て大洋漁業(株)と改称するとともに,大規模な造船計画を実施した。その後,南氷洋捕鯨,北洋漁業に積極的に取り組む一方,魚肉ハム・ソーセージ,配合飼料,砂糖などの生産に進出,事業を多角化し商社的性格を強めた。近年漁獲量の低迷や多角化の失敗で一時悪化した業績も,多角化の見直し等をすすめた結果回復しつつある。93年社名をマルハと改称,さらに2004年持株会社に移行してマルハグループ本社を設立。資本金250億円(05年9月),売上高7472億円(05年3月期)。07年ニチロとの経営統合によりマルハニチロホールディングスを設立。
執筆者:北井 義久
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報