改訂新版 世界大百科事典 「ミクリ」の意味・わかりやすい解説
ミクリ (実栗)
bur reed
Sparganium erectum L.
浅い水底から直立して生えるミクリ科の多年草。地中を横にはう根茎があり,これから直立茎を出し,高さ50~100cmになる。葉は2列に互生し,線形,ほぼ直立して茎より高くなり,幅8~15mmで,裏面の中肋に稜がある。花期は6~8月。茎の上部の葉腋(ようえき)から枝を出し,多数の単性花が集合して球形の頭状花序をつける。枝の下部には1~3個の雌性頭状花序,上部に多数の雄性頭状花序がつくが,いずれも柄がない。雄花の花被片は3~4枚あり,さじ形で長さ約2mm,おしべは3本ある。花粉は風で運ばれる。雌花の花被片は3枚で倒卵形,長さ約3mmある。子房は上位で,花柱の先の片側だけに長さ3~6mmの糸状の柱頭がついている。雌花序は熟すと,球形で緑色の集合果となる。各果実は密集して押し合うため稜ができ,果皮の外側はやわらかく,内側は硬い。中には種子が1個と胚乳がある。集合果がクリのいがに似ているので実栗という。北海道~九州,アジア,ヨーロッパ,北アフリカの温帯に広く分布している。
ヤマトミクリS.fallax Graebn.はこれに似ているが,雌性頭状花序に柄があり,柄の下部は主軸と合着しているため,葉と葉の中間で枝分れしているように見える。これを腋上生という。柱頭は短く,糸状とはならない。ウキミクリS.gramineum Georgiは高山の池に生え,茎も葉もやわらかく,水面に浮かぶ。
執筆者:山下 貴司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報