ミルグロム(読み)みるぐろむ(英語表記)Paul Robert Milgrom

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ミルグロム
みるぐろむ
Paul Robert Milgrom
(1948― )

アメリカの経済学者。オークション理論auction theoryの世界的権威。アメリカのミシガン州デトロイト生まれ。1970年にミシガン大学を卒業(数学士)し、保険会社で保険数理人(アクチュアリー)として勤めた後、1975年にスタンフォード大学で経営学修士(MBA)、1979年に経済学博士(Ph.D.)を取得。ノースウェスタン大学、エール大学教授などを経て1987年からスタンフォード大学教授を務める。オークション理論、価格決定論、インセンティブ理論、マーケット・デザイン理論、組織論などゲーム理論や数理経済学を実用化する多様な業績をあげている。2020年、オークション理論を発展・実用化した功績で、ミルグロムの恩師でスタンフォード大学名誉教授のロバート・ウィルソンとともにノーベル経済学賞を受賞。『オークション理論とデザイン』(2004年、Putting Auction Theory to Work)など多数の著書があり、共著『組織の経済学』(1992年、Economics,Organization and Management)は世界のビジネス・スクールの標準的教科書となっている。

 「見えざる手」のみにゆだねる古典派経済学では、経済主体に情報の偏在(非対称性)などがあるため効率的配分ができない「市場の失敗」が起きる。これを避けるためミクロ経済学では、ゲーム理論や実験経済学の研究が盛んになり、その一環としてオークション理論がビッカリー(1996年、ノーベル経済学賞受賞)や、ウィルソンらによって発展した。ビッカリーはモノやサービスの価値が入札者によって異なる私的価値private valueに関するオークション理論を、ウィルソンは無線周波数や採掘権などだれにとっても共通価値common valueをもつオークション理論をそれぞれ導入した。ミルグロムは1980年初頭の論文で、私的価値と共通価値のいずれをも含むオークションの分析理論を考案。入札額と私的情報との連関が強いほど高い収益をもたらすことを証明し、売り手がモノやサービスの情報を積極的に開示することが適切な価格形成につながるとのリンケージ原理linkage principleを導き出した。ウィルソンらと共同で、複数オークションを同時並行で繰り返す「同時複数ラウンド競り上げ入札Simultaneous Multi-Round Ascending Auction」など、広く社会全般に利益をもたらす多様なオークション方式を開発。無線周波数、採掘権、排出権、電力、国債、公共工事、ネット広告などの入札や割当てなど幅広い分野にオークションを実用化する道を開いた。

[矢野 武 2021年2月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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