ムーランルージュ(読み)むーらんるーじゅ(英語表記)Moulin Rouge

デジタル大辞泉 「ムーランルージュ」の意味・読み・例文・類語

ムーラン‐ルージュ(〈フランス〉Moulin-Rouge)

赤い風車の意》
パリのレビュー劇場。1889年にダンスホールとして開場、フレンチカンカンなどのショーで人気を博した。のちミュージックホールに変わり、1929年に映画館となった。現在、併設のダンスホールでレビューを上演。
昭和6年(1931)東京新宿に創設された軽演劇劇団、またその劇場。都会風の風刺喜劇で学生・インテリ層に受けた。昭和26年(1951)に解散。

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精選版 日本国語大辞典 「ムーランルージュ」の意味・読み・例文・類語

ムーラン‐ルージュ

  1. ( [フランス語] moulin rouge )
  2. [ 1 ] 赤い風車。また、それを模したもの。
    1. [初出の実例]「赤玉が屋上にムーラン・ルージュをつけて道頓堀の夜空を赤く青く染めると」(出典:世相(1946)〈織田作之助〉三)
  3. [ 2 ]
    1. [ 一 ] パリのモンマルトルに、一八八九年に開場したダンスホール。フレンチカンカンなどのショーアトラクションで人気を博した。一九〇三年、ミュージックホールとなり、多くのスターを輩出したが、のち映画館となる。名称は、屋上にある大きな赤い風車にちなむ。
    2. [ 二 ] [ 一 ]を模した日本の軽演劇劇場。昭和六年(一九三一佐々木千里が新宿に創設。都会風で風刺的な感覚がインテリ・学生層にうけ、浅草のカジノフォーリーに対抗した。

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改訂新版 世界大百科事典 「ムーランルージュ」の意味・わかりやすい解説

ムーラン・ルージュ
Moulin Rouge

(1)パリのブランシュ広場の舞踊場,娯楽劇場。建物に取り付けられた巨大な〈赤い風車(ムーラン・ルージュ)〉がこの劇場の象徴で,それがそのまま名称となっている。1889年に舞踊場(ダンスホール)として開場,キャバレー形式のショーをアトラクションとして見せた。特に,フレンチ・カンカン(カンカン)と呼ばれる快活でエロティックな踊りが呼物となり,〈世紀末のパリ〉における代表的な娯楽場となった。このころのムーラン・ルージュの雰囲気は,《ムーラン・ルージュにて》(1892)などH.deT.ロートレックによる幾多の傑作によってよく知ることができる。

 1903年に改造されて客席と舞台を分けた劇場形式となり,レビューやオペレッタが盛んに上演された。14年に火災で失われたが,第1次大戦後に再建され,特に20年代後半にはシャンソン歌手・女優のミスタンゲットを中心とする大レビューを上演して,ミュージック・ホールとしての黄金時代を築いた。しかし29年,当時はじまったトーキー映画におされて映画館に転向した。なお20年代半ば以降に,ミュージック・ホールと併置されるかたちとなった舞踊場では,今日も観光用のレビュー,カンカンが行われているが,昔日の活況はしのぶべくもない。
執筆者:(2)日本の劇団・劇場名。正式名称は〈ムーランルージュ新宿座〉。1931年12月,佐々木千里がパリのミュージック・ホールの名をとって軽演劇の一座を東京新宿で旗揚げ,都会感覚のしゃれた風刺喜劇が知識青年に大いに受けた。伊馬鵜平(伊馬春部(いまはるべ)),斎藤豊吉,山田寿夫,穂積純太郎,小崎政房,菊岡久利らの文芸部が充実し,中根竜太郎,有馬是馬,竹久千恵子,明日待子,望月美恵子らの俳優で人気を得た。第2次大戦中は改名を余儀なくされたが,戦後も中江良夫森繁久弥で脚光を浴びた。だが51年にヌードショーに追われて解散した。
軽演劇
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムーランルージュ」の意味・わかりやすい解説

ムーラン・ルージュ
むーらんるーじゅ
Moulin Rouge

(1)パリ、モンマルトルのクリシー通りに1889年に建てられたダンスホール。フランス語で「赤い風車」の意で、屋上に取り付けられた大きな赤い風車に由来する。当地万国博覧会が開かれたのを機に観光客の吸引を目的として建設したもので、客に踊らせると同時にアトラクションとして各種のショーを上演したが、なかでもフレンチ・カンカンとよばれる陽気でエロティックな踊りが人気を博し、名物となった。またロートレックが1891年にポスターを描いたのをはじめ、場内の雰囲気を描写した作品を多く発表したため、いっそう有名になった。1903年に内部を改装、小劇場形式となり、レビューや各種のショーを上演、ミスタンゲット、モーリス・シュバリエなどのスターが輩出したが、1915年に全焼、1918年にミュージック・ホールとして再建された。1924年に隣接してダンスホールが設けられたが、今日一般にムーラン・ルージュといわれているのは、このBal du Moulin Rougeのほうで、往年の華やかさには欠けるものの、いまだにカンカンなどのレビューが上演され、観光名所となっている。本来のミュージック・ホールのほうは1929年に映画館に転向した。

(2)東京・新宿の新宿座に1931年(昭和6)に旗揚げされた劇団。パリのムーラン・ルージュの名を模したもので、創立者は浅草オペラ出身の佐々木千里(せんり)(1891―1961)。ここで上演された新感覚の喜劇は浅草あたりの軽演劇とは異なり、学生やサラリーマンなどインテリ層の人気を集め、劇界に新風を吹き込んだ。1944年には作文館と改称、1945年一時松竹の経営に移るが戦災で焼失、1946年(昭和21)劇団小議会として復活、翌1947年旧名に戻ったが、経営難のため1951年に解散。創立以来の公演数は通算500回、その間斎藤豊吉(とよきち)(1903―1976)、伊馬春部(いまはるべ)、阿木翁助(あぎおうすけ)(1912―2002)、中江良夫(1910―1986)らの劇作家、有馬是馬(ありまこれま)(1906―1963)、明日待子(あしたまつこ)(1920―2019)、左卜全(ぼくぜん)(1894―1971)、森繁久弥(もりしげひさや)らの俳優が輩出した。

[向井爽也]


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百科事典マイペディア 「ムーランルージュ」の意味・わかりやすい解説

ムーラン・ルージュ

赤い風車の意。(1)パリのレビュー劇場。1889年開場。フレンチ・カンカン(カンカン)が呼物となり世紀末パリの一大娯楽場となった。ロートレックの作品によってその雰囲気をうかがえる。現在は映画館。(2)1931年新宿に創設された軽演劇団(軽演劇)。山の手の学生やサラリーマンを対象に,現代感覚の風刺劇を上演。戦後経営難から解散。多くの作家,俳優が輩出した。
→関連項目ミュージック・ホール

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムーランルージュ」の意味・わかりやすい解説

ムーラン・ルージュ
Moulin Rouge

フランス,パリのミュージック・ホール,ダンス・ホール。「赤い風車」の意で,1889年のパリ万国博覧会のおり,ダンス・ホールとして開場。アトラクションの踊り,フレンチカンカンで人気を博したが,1914年失火で全焼。 1918年ミュージック・ホールとして再建され,ダンス・ホールは別に隣に建てられた。ミュージック・ホールではミスタンゲットを中心として黄金時代を迎えたが,トーキー映画の発展に伴い,映画館となった。現在,ムーラン・ルージュと呼ばれているのはダンス・ホール Bal du Moulin Rougeのほうで,一流の芸人のショーが行なわれている。

ムーラン・ルージュ

1931年東京新宿に浅草オペラ出身の佐々木千里が創設した劇団および劇場名。正式名称「ムーラン・ルージュ新宿座」。「新喜劇」と称する軽演劇を上演,知識人層の人気を得た。斎藤豊吉,伊馬鵜平(伊馬春部),阿木翁助らの作家を輩出する一方,明日待子らの人気女優を生んだ。軍国主義下で変質を強いられ,1945年戦火で劇場が焼失した。第2次世界大戦後再建され,森繁久彌らを育てたが,1951年解散。

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デジタル大辞泉プラス 「ムーランルージュ」の解説

ムーラン・ルージュ

2001年製作のオーストラリア・アメリカ合作映画。原題《Moulin Rouge!》。ユアン・マクレガー、ニコール・キッドマン主演のミュージカル。監督:バズ・ラーマン。第74回米国アカデミー賞作品賞ノミネート。同美術賞、衣装デザイン賞受賞。第59回米国ゴールデングローブ賞作品賞(ミュージカル・コメディ部門)受賞。

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世界大百科事典(旧版)内のムーランルージュの言及

【ミュージック・ホール】より

…第1次大戦ころからラジオや映画に押されて衰え始め,その後テレビの普及で完全に消えてしまったが,ミュージック・ホール風の芸はイギリスのパントマイムやミュージカルに伝えられている。ほかに同時代のフランスでもイギリスのものを模してミュージック・ホールが建てられ,1869年開場のフォリー・ベルジェールFolies‐Bergères,89年開場のムーラン・ルージュなど,パリのホールが人気の中心となった。アメリカにも類似の芸能があり,ボードビルと呼ばれる。…

※「ムーランルージュ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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