メシア(英語表記)Messiah

翻訳|Messiah

デジタル大辞泉 「メシア」の意味・読み・例文・類語

メシア(Messiah)

ヘブライ語で、聖油を注がれた者の意。「メシヤ」とも》旧約聖書では、超人間的な英知能力をもってイスラエルを治める王をいい、新約聖書では、イエス=キリストをさす。救世主メサイア

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精選版 日本国語大辞典 「メシア」の意味・読み・例文・類語

メシア

  1. 〘 名詞 〙 ( [ポルトガル語] Messias もとヘブライ語で「油を注がれた者」の意 )[ 異表記 ] メシヤ・メシヤス・メッシア 旧約聖書では、超人間的な英知と能力をもってイスラエルを治める王者をいい、新約聖書では、この世に生まれたイエスキリストをいう。救世主。
    1. [初出の実例]「文壇の慈氏(みろく)詞場のメシヤスは果していつか出現すべき」(出典:柵草紙の山房論文(1891‐92)〈森鴎外逍遙子烏有先生と)

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改訂新版 世界大百科事典 「メシア」の意味・わかりやすい解説

メシア
Messiah

ヘブライ語マーシャハ(油を注ぐ)という動詞名詞形マーシーァハ(油注がれた者)に由来する語。救世主。ギリシア語ではクリストス(キリスト)と訳された。聖書的伝統によれば,神の介入によって変貌した歴史内世界に立てられる神の支配の代行者をいう。そして,このメシアによる終末的救済によってもたらされる新しい世界秩序の到来を待望する世界観をメシアニズムという。メシア思想は,古代オリエントの宇宙論的な世界変貌の思想を背景にもつが,とくに古代イスラエルの預言者の終末論的歴史観に基づいて成立したと説明される。注油は,本来,エジプトファラオ(王)が官吏,封臣を職に任じる際の慣習であるが,古代イスラエルでは,神ヤハウェがある人物(サウル,ダビデなど)を聖別し,王に任じるとの考えでなされ,油注がれた者=メシアといわれた。旧約聖書では後代,拡大されて,祭司や族長にも用いられた。油を注いで王とする制度が単なる一人の王の即位儀礼ではなく,ダビデ王家の統治を否定して,神の介入による新しい天的王者と理想的秩序の出現(例えば《イザヤ書》11:1~9)を告知するように,現実の王支配を否定媒介して成立したのが,すぐれて強烈な歴史変革の意識をもつヘブライ預言者の独特の思想であった。その後,民族の危機,苦難に際するたびに,メシアを自認する者,その到来を預言する預言者が出現した。ヘレニズム期後期とローマ帝国の圧政下で,ユダヤの民衆の中の強いメシア出現の願望を背景に,ユダヤ教団,とくにその過激派の中からメシアを自称する者が現れて権力に抗したが,弾圧・粛清された。キリスト教は,あらゆる人間の矛盾,苦しみ,罪をみずから背負い,代償死を遂げた苦難の僕(《イザヤ書》52:13~53:12参照)の中に現実世界と人間の究極の救済を見,十字架に刑死したイエスに真のメシア(キリスト)と真のメシアニズムの完成を見た。
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百科事典マイペディア 「メシア」の意味・わかりやすい解説

メシア

救世主。Messiahは元来ヘブライ語で〈油を注がれた者〉の意。ギリシア語でクリストスChristosと訳され,イエス・キリストの名はこれに由来する。旧約聖書では,ヤハウェが特定の人物を聖別して王となすとの思想があり,これがキリスト教にひき継がれて,キリストは人類救済のためにこの世に生まれた救い主であるとされ,この名称で呼ばれる。また後世,救世主の登場による新しい世界秩序を待望する思想をメシアニズムという。
→関連項目最後の審判千年王国ダビデマフディー

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旺文社世界史事典 三訂版 「メシア」の解説

メシア
Messiah

救世主
原意はヘブライ語で「油をそそがれし者」の意。ヘブライ人の王が祭司に油をそそがれて即位した儀式に由来し,のち「神に祝福されし者」を意味した。ヘブライ人は,モーセ以来,メシアが救世主としてこの世に現れることを待望していた。その後,イエスをメシアと考える人々によって,いわゆるキリスト教が生まれた。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「メシア」の解説

メシア
Messiah

「救世主」の意。そのギリシア語訳がクリストス(キリスト)。ヘブル(ヘブライ)語の原意は「油を注がれた者」で,主としてヘブライ人の王が祭司より油を注がれて即位した儀式に由来する。のちに宗教的意味が加わり,キリスト教に受け継がれた。

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世界大百科事典(旧版)内のメシアの言及

【油】より

…王の即位式にみられる塗油は,こうした観念の表出である。メシアは,〈神によって注油された者〉を意味していた。受難を目前にしたイエスに,ひとりの女が高価なナルドnardの香油を注いだという美しい信仰の物語(《マルコによる福音書》14:3以下)も,この系譜に属している。…

【イエス・キリスト】より

…前1000年ころ,ダビデは油を注がれて,イスラエルの王位についている。 ところで,イエス時代のユダヤ教徒は,この世の終末のときにダビデ王の子孫からメシアが現れて,イスラエルを中心に〈神の国〉をもたらすと信じていた。このヘブライ語の〈メシア〉,正確には〈マーシアハ〉がギリシア語で〈キリスト〉(正確には〈クリストスChristos〉)と呼ばれ,日本では一般的に〈救世主〉と訳されているものである。…

【イラン神話】より

…その3人目,つまり最後の子息が〈真実の化身(アストバト・ウルタ)〉,通常サオシュヤントと呼ばれるこの世の救済者である。このサオシュヤントの概念は,ユダヤ教を通ってキリスト教にその救済者(メシア)像の原型を提供し,さらにイスラムにその〈隠れイマーム(マフディー)〉の理念を与えた。
[終末論]
 アベスターによれば,人の魂は死後〈選別者の橋(チンバトー・プルトゥ)〉で,自分自身のダエーナー(宗教,意識)に迎えられる。…

【キリスト論】より

…古代教会において激しい論争があったが,その後も絶えずとらえ直されてきたのは,これが神学の根本構造にかかわっているからである。(1)原始教会では,イエスは最初比較的単純にユダヤ教の用語をもって〈キリスト〉(メシア=神によって油注がれて王となった者),〈神の子〉と呼ばれ,また世の終りに再び来て〈神の国〉を完成する者と信じられていた。しかしキリスト教がパレスティナを出てヘレニズム世界に入るとこのキリスト理解に変化が生じ,神秘宗教的にイエスを神的人間と見なし,〈キュリオスkyrios〉(主)と呼ぶようになった。…

【終末観】より

…ゾロアスター教では一回限りの世界過程の終末期に,善神(アフラ・マズダ)が悪神(アーリマン)を破って世界の審判と人類の復活が実現される。ユダヤ教では,世界の終末期における審判と救済の思想は同様であるが,そのほかに神の正義を実現するための代行者(メシア)の思想が登場したところに特色がある。この考え方はキリスト教に強い影響を与え,救済者としてのキリストの出現,その十字架上の死と栄光の復活という過程を通して〈神の国〉(全人類の救済)がつくられるという観念を生みだした。…

【救い】より

…これらのことはイスラエルではつねに歴史の原型として想起される。のちに預言者は終末の救いを第2の出エジプトとし,終末時の王たるメシアを昔の戦争指導者に擬した。エゼキエルや第2イザヤのようなバビロン捕囚期の預言者は,捕囚からの解放の希望とならんで個々人の罪の赦(ゆる)しを語った。…

【マフディー】より

…一方で〈神により正しく導かれた者〉という意味にも用いられ,アブラハム,ムハンマド,アリーほか4人の正統カリフ,アッバース朝カリフのナーシルなどがマフディーと呼ばれる。他方,メシアの意味でも用いられ(終末論的マフディー),その初見は過激シーア派のカイサーン派のムフタールが,ムハンマド・ブン・アルハナフィーヤをイマームおよびマフディーとして奉じ,クーファで反乱を起こした時である(ムフタールの乱)。反乱が鎮定され,ムハンマドが700年に没すると,カイサーン派の一部の者はムハンマドは死んだのではなく,一時姿を隠しているにすぎず,やがて地上に再臨して正義と公正とを実現すると説いた。…

※「メシア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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