千年王国(読み)せんねんおうこく(英語表記)millennium

精選版 日本国語大辞典 「千年王国」の意味・読み・例文・類語

せんねん‐おうこく ‥ワウコク【千年王国】

〘名〙 世界終末の前にキリストが再臨して、一千年間治めると信じられている理想的な王国。→至福千年説

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「千年王国」の意味・読み・例文・類語

せんねん‐おうこく〔‐ワウコク〕【千年王国】

キリスト教で、再臨したキリストが一千年間統治する理想・至福の王国。→千年王国説

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「千年王国」の意味・わかりやすい解説

千年王国
せんねんおうこく
millennium
millenarianism
chiliasm

千福年、至福(しふく)千年ともいう。キリスト教の終末論の一形態で、「ヨハネ黙示録」20章の字句どおりの解釈に基づく。それによると、最後の審判の前に、キリストが再臨して地上に王国を打ち立てる。この王国は1000年続き、このとき、殉教者や義(ただ)しいキリスト教徒は復活して(第一の復活)、1000年間の至福を味わう。この間悪魔は鎖につながれているが、王国の終わりにあたりふたたび活動を許され、激しい闘いののち、最後の審判において決定的に敗れる。そこで罪人たちもよみがえり(第二の復活)、審判を経て火の池に投げ入れられる(第二の死)。一方、義しい人々は天国(神の国)の永遠の至福のなかに入り、終末は完成する。

 こうした思想萌芽(ほうが)はすでに『旧約聖書』の預言書にもみられ、さらにキリストの再臨の前に、アンチ(反)キリストの地上支配を説くシビラの預言書(4世紀)などの思想も組み入れて、漸次定式化されていった。正統教会はこうした終末観を異端視してきたが、終末の到来待望する心情にも支えられて、中世を通じ千年王国思想は受け継がれ、とくに11世紀のヨアキム・ダ・フィオーレの思想は後世に大きな影響を与えた。

 宗教改革期にはトマス・ミュンツァーら再洗礼派にこの思想が顕著で、現代ではアメリカのウィリアム・ミラー(1782―1849)に始まるアドベンティスト派(再臨(さいりん)派)やエホバ証人(ものみの塔)などは、千年王国思想を教義の中心に置いている。またメラネシアカーゴ・カルト、中国の太平天国の乱なども、この思想を受け継いだものである。

[鶴岡賀雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「千年王国」の意味・わかりやすい解説

千年王国【せんねんおうこく】

millenniumの訳。本来《ヨハネの黙示録》にあらわれる,キリストが再臨後,最後の審判前までの1000年間治めるという地上の王国をさす。その期間を〈至福千年〉ともいい,教説を千年王国説(至福千年説)millenarianismという。広義に理想社会を希求する中世ヨーロッパの異端的神秘主義運動や,ラスタファリ運動カーゴ・カルトなど白人の植民地支配に抵抗する非西欧世界の宗教運動の多くも千年王国運動に含められる。千年王国運動は,最終的で完全な救済が信者全体に一挙にもたらされることを熱望する。それは信者の死後にではなく,この世において,今すぐにでも実現しうるものとして信仰される。全ての苦難を除去する超自然的力を持ったメシア(救世主)の出現が予言される例も多い。千年王国運動の発生要因には,土着主義運動と同様,文化変容や絶対的・相対的剥奪があるとされ,近代的政治運動への発展可能性を認める説もある。
→関連項目第三帝国

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版 「千年王国」の意味・わかりやすい解説

せんねんおうこく【千年王国】

キリスト教世界において,終末にあたってキリストが再臨し,1000年間統治すると信じられた王国のこと。転じて正義と平和が支配する理想的世界やユートピア,黄金時代を指して用いられることもある。この現世における至福の王国の到来に対する待望は,千年王国説あるいは至福千年説millenarianism,chiliasmとして教説化され,さらには具体的な運動として発現した。西欧語は千を意味するラテン語のmille,もしくはギリシア語のchiliasにもとづく。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「千年王国」の解説

千年王国(せんねんおうこく)
millenarianism

キリスト教思想において終末にあたり,キリストが再臨して千年間統治するという観念。ユダヤ教メシア待望に源を持ち,初期キリスト教の時代に「ヨハネ黙示録」の記述と結びついて流布し,しばしば民衆の間で,現世のなかに至福の状態が実現するとして,その到来を熱狂的に主張する者が現れた。現代でもキリスト教を称する異端的運動にみられる。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典内の千年王国の言及

【ニレンダ】より

…ニヤサランド(現,マラウィ)に生まれ,1920年代に北ローデシア(現,ザンビア)へ移り,鉱山労働者として働くうちにウォッチタワー運動と出会い,洗礼を受けて伝道生活に入ったが,25年初めころにはキタワラ運動の創始者となった。キタワラ運動は,ベルギー領コンゴ(現,コンゴ民主共和国)でのキンバンギズム運動(キンバング)と同様に千年王国思想を有し,白人の権威を否定するとともに,きたるべき最後の審判によって黒人は白人支配(したがって植民地主義の支配)の政治的・経済的苦境を脱することができるという教えを説き広め,多数の信者を集めた。北ローデシア植民地政府はただちに彼を逮捕したが,まもなく釈放されると彼は自らムワナ・レサ(神の子)と称し,中部州を中心により多くの信者,支持者を得た。…

【ミュンスター再洗礼派王国】より

…他方,ネーデルラントで迫害されていたメルヒオル派再洗礼派はミュンスターを新エルサレムとみなし大挙流入してきた。かくして新旧諸侯軍の包囲下,再洗礼派千年王国が樹立される。稠密な時間空間の中に成り立ち,ユダヤ・キリスト教の黙示録的千年王国思想を指導理念としたために,それは,古今東西の千年王国運動のなかで最も典型的に開花したものということができる。…

※「千年王国」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

狐の嫁入り

1 日が照っているのに、急に雨がぱらつくこと。日照り雨。2 夜、山野で狐火が連なって、嫁入り行列の提灯ちょうちんのように見えるもの。[類語](1)狐日和びより・天気雨・雨天・荒天・悪天・雨空・梅雨空・...

狐の嫁入りの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android