不飽和脂肪酸の一つ。α(アルファ)-メチルアクリル酸ともいう。1937年に開発されたアセトンシアノヒドリン法により、アセトンにシアン化水素を付加させてアセトンシアノヒドリンにしたのち、硫酸により脱水・加水分解して製造していた。しかし、シアン化水素は猛毒で入手や廃酸処理がむずかしいので、現在では、モリブデン系触媒を用いてイソブチレン(2-メチルプロペン)を空気酸化して合成している。
無色の柱状結晶または液体で、刺激臭をもつ。水には常温で18%ほど溶け、エタノール(エチルアルコール)、エーテルなどの有機溶媒によく溶ける。酢酸よりも強い酸性を示す。重合をおこしやすく、長時間放置するだけで徐々に重合し、酸を数滴加えると速やかに重合する。水溶性高分子の合成原料、他のビニル化合物との共重合体の製造、イオン交換樹脂の製造などに用いる。この化合物のエステルであるメタクリル酸メチルは、アクリル樹脂の原料として重要で、有機ガラスなどの製造に用いられている。
[廣田 穰 2016年11月18日]
α-メチルアクリル酸のことで,methylとacrylic acidの合成語。化学式CH2=C(CH3)COOH。融点16℃,沸点160.5℃,比重1.0128(20℃)の刺激臭がある無色の柱状晶。水に可溶,アルコール,エーテルには任意の割合で溶解する。酢酸よりも酸性が強く,腐食性をもつ。アクリル酸よりも重合しやすく,熱,光,触媒により容易に重合する。通常,重合防止剤として0.1%程度のヒドロキノンを加えて保存する。実験室ではメタクリル酸メチルの水酸化ナトリウム触媒による加水分解で合成できるが,工業的にはアセトンシアンヒドリン(CH3)2C(OH)CNの希硫酸による加水分解やメタクロレイン(CH2=CHCHO)3の酸化,イソブチレンCH2=C(CH3)2の酸化により製造される。メタクリル酸の重合体は水溶性で,合成樹脂や接着剤として用いられているが,他のビニル化合物との共重合体はイオン交換樹脂などに用いられる。メタクリル酸エステルの重合体は光透過性が大きく,有機ガラスとして広く用いられる。
→アクリル樹脂
執筆者:井畑 敏一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
2-methyl-2-propenoic acid.C4H6O2(86.09).CH2=C(CH3)COOH.α-メチルアクリル酸ともいう.アセトンシアノヒドリンを硫酸で加水分解するか,メタクロレインを酸化しても得られる.工業的製法として,イソブチレンまたはtert-ブチルアルコールの空気酸化による方法がある.無色の針状結晶.融点16 ℃,沸点160.5 ℃,81 ℃(4 kPa).1.0153.1.4314.pKa 4.66.引火点77 ℃.温水に可溶,エーテル,アルコールに易溶.加熱や痕跡の塩酸の存在下で容易に重合するので,重合防止剤として0.1% のヒドロキノンを加えて保存する.還元するとイソ酪酸に,臭化水素を付加するとα-ブロモイソ酪酸になる.刺激臭があり,酢酸より酸性が強く,腐食性で,皮膚などに強い刺激性がある.水溶性高分子,イオン交換樹脂の原料として用いるほか,メチルエステルは有機ガラスの製造原料となる.[CAS 79-41-4]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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