有機硫黄(いおう)化合物の一種で、有機化合物の水素をメルカプト基(スルファニル基)-SHで置換した化合物の総称。チオール、チオアルコールなどともよばれる。正式にはメルカプト基をもつ化合物をチオールというが、ベンゼン環に置換したものをチオフェノール、脂肪族炭化水素の誘導体をメルカプタン(この名称は正式には認められていない)と区別して使うことがある。この使い分けは、フェノールとアルコールという相当するOH置換体の場合に対応する。また硫黄と酸素が周期表で同じ酸素族に属することから、メルカプト基をもった化合物はヒドロキシ基をもった化合物と類似する点が少なくない。
メルカプタン類は一般に揮発性で不快臭のある液体である。水やエタノール(エチルアルコール)には溶けやすく、水溶液は弱い酸性を示す(硫化水素の弱酸性に対応する)。金属とはメルカプチドとよばれる一種の塩を形成する。とくに重金属とは水に不溶性の塩となる。水銀mercuryと反応して沈殿を生じる(捕らえるcaptare)ことから、メルカプタンと命名したのはデンマークのツァイゼWilliam Christopher Zeise(1789―1847)である(1834)。
エタンチオール(エチルメルカプタン)C2H5SHは天然ガスなどの燃料用ガスの付臭剤として使われている。スカンクの放つガスにもかなりの量のメルカプタンが含まれているといわれている。
[務台 潔]
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…また,衣服に付着すると,使用に耐えなくなるといわれる。においの主成分はメルカプタン,とくにブチルメルカプタンC4H9SHである。悪臭は天敵からの護身に役だち,白色と黒色の目だつ体色は警告色としての効果をもつものと考えられる。…
…メルカプト基-SHが炭化水素基と結合した有機化合物R-SHの総称で,メルカプタンmercaptanと呼ばれることもある。アルコールの水酸基の酸素原子に代わって硫黄原子が入った形であり,チオアルコールthioalcoholともいう。…
※「メルカプタン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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