改訂新版 世界大百科事典 「メルセンヌ」の意味・わかりやすい解説
メルセンヌ
Marin Mersenne
生没年:1588-1648
フランスの科学者,思想家。フランス北西部サルト県の小村に農民の子として生まれ,ル・マンとラ・フレーシュの学院,ついでソルボンヌ神学部などに学んだのち1611年ミニモ会修道士になった。14-19年の間ヌベールのミニモ会修道院で哲学,神学を教えたが,その後はパリの同会修道院に戻り,そこで没した。早くから新しい科学に熱中し,多くの著作やガリレイの翻訳などによって,実験に基礎を置く近代科学の確立と推進に尽くした。なかでも大著《普遍和声学》(1636-37)その他による数学,音響学,音楽学の研究が知られているが,それ以上に重要なものは当時のヨーロッパ学界の情報収集・伝達網の中心としての活動であろう。35年に彼がつくったパリ・アカデミーはパスカル父子,ガッサンディ,ロベルバルGilles Personne de Roberval,ミドルジュClaude Mydorge,デザルグらを集めてフランスの科学研究をリードし,のちのアカデミー・デ・シアンスの創立(1666)を準備したし,またデカルト,フェルマー,グロティウス,ホッブズなど150名にも及ぶ各国学者との膨大な往復書簡は,今日の学術誌に匹敵する重要な役割を果たしたと言われる。
執筆者:赤木 昭三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報