ガリレオ(読み)がりれお(英語表記)Galileo

翻訳|Galileo

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガリレオ」の意味・わかりやすい解説

ガリレオ
がりれお
Galileo

NASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)が1989年10月にスペースシャトルで打ち上げた木星および木星の衛星を探査する探査機。木星を周回観測するオービターと、木星大気突入して大気組成を調査するプローブ(突入機)から構成される。質量は2564キログラム(オービターとプローブ)。ガリレオはスペースシャトル・アトランティスにより地球周回軌道上に運ばれ、ペイロードベイから放出された。その後、オービターが充分に離れたあと、固体ロケットに点火し、金星や地球を利用するスイングバイ天体重力を利用して加速させる技術)を行い、オービターは1995年に木星の周回軌道に入った。プローブも同年7月オービターから切り離され、12月7日に木星大気に突入して観測を行った。プローブは57分間にわたって観測データを送信し続けたのち、高い気圧と熱によって機能を喪失し、観測は終了した。

 オービターは800×800画素のCCDカメラや、磁気センサーなどの計測機器を搭載するとともに、地球との通信用に大小2基のアンテナを、プローブとの通信中継用に1基のアンテナを装備していた。このうち主アンテナ(高利得アンテナ)は予定通りに展開せず、地球との通信には小型のアンテナが用いられた。主アンテナに比べ低速でしか交信できないため、探査機のプログラムを遠隔操作で書き換え、観測データを圧縮して送信させるなどの対策がとられた。また、ガリレオには電源として、プルトニウムの自然崩壊熱を熱電対で電気に変える原子力電池を搭載していた。

 プローブが木星大気に突入して57分間に発見したことは、木星の主要な構成物質である水素ヘリウム(宇宙でもっとも豊富な二大元素)が、太陽形成時とほぼ同じ比率であったこと、木星の質量の75%は水素で24%がヘリウムであったことである。一方、オービターは約7年の間に、ガリレオ衛星(ガリレオ・ガリレイが発見した木星のイオユーロパ(エウロパ)、ガニメデ、カリストの四大衛星)などを詳細に観測した。とくに「イオ」の大噴火の発見、「ユーロパ」の氷の地面の下に海が存在することなどは重要な発見であった。オービターの姿勢制御燃料が尽きた結果、ミッションは終了し、2003年9月に木星大気に突入した。木星への突入は、生命の存在する可能性があるユーロパに衝突した場合、原子力電池による放射能汚染および地球の微生物による生物汚染の危険があり、これを避けるための処置であった。

 なお、名称はイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイに由来する。

[森山 隆 2017年4月18日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガリレオ」の意味・わかりやすい解説

ガリレオ
Galileo

アメリカ航空宇宙局 NASAの木星探査のための惑星探査機。最初に木星の衛星を発見したガリレオ・ガリレイを記念して命名された。木星の大気圏と衛星の化学成分および物理的状態の調査,木星の磁気圏の構造などの調査を目的とした。1989年10月18日にスペースシャトルに搭載して打ち上げられ,1990年2月に金星で,1990年12月と 1992年12月に地球で,それぞれフライバイを行なって加速,1995年12月に木星に到達した。その後プローブ(観測装置)を大気へ突入させ,2年にわたって木星とガリレオ衛星(イオエウロパガニメドカリスト)について,ボイジャーパイオニアの最接近で得られた以上の高解像度の画像などを取得した。1997年に初期ミッションを終えたのちも木星の周回軌道上で観測を続け,エウロパを覆う氷のプレートの下に液体の海があることを示すデータを取得。このデータによって,エウロパに生命が存在する可能性が示唆された。2003年9月,木星大気中に突入して消滅した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

お手玉

世界各地で古くから行われている遊戯の一つ。日本では,小豆,米,じゅず玉などを小袋に詰め,5~7個の袋を組として,これらを連続して空中に投げ上げ,落さないように両手または片手で取りさばき,投げ玉の数や継...

お手玉の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android