日本大百科全書(ニッポニカ) 「モノアラガイ」の意味・わかりやすい解説
モノアラガイ
ものあらがい / 物洗貝
[学] Radix auricularius japonicus
軟体動物門腹足綱モノアラガイ科の巻き貝。北海道から九州に至る日本全国の池や沼、水田などにすむ淡水産種で、水草などに付着している。殻高25ミリメートル、殻幅20ミリメートルに達し、全体は卵形で、薄質半透明で飴(あめ)色。螺層(らそう)は4階あるが、体層は非常に大きく、殻高の5分の4を占め、殻口は広い。殻口外唇は薄く、老成すると外側に反る。軸唇には薄い滑層がのっていて、内唇の下ですこしねじれる。触角は広い三角形で、基部に目がある。外套(がいとう)膜の上に大小の黒い斑紋(はんもん)があるのが、薄い殻を透かして見える。夏季に、ゼラチン質の短い紐(ひも)状の卵嚢(らんのう)に入れた卵を、水草の上や水槽の壁面などに産み付ける。有肺類であるから水面近くにきて空気呼吸をするが、幼貝の時代には水中だけにすむ。ウシやウマなどに寄生する肝蛭(かんてつ)などの中間宿主である。最近は移入種のサカマキガイPhysa acutaにニッチ(生態的地位)を奪われた感があり、都会地にはむしろ少なくなった。
よく似たヒメモノアラガイBakerlymnaea viridisは殻高10ミリメートルぐらいで小形、殻口は本種ほど広がらず、殻の色も黄褐色でつやがある。モノアラガイ同様肝蛭などの中間宿主になる。また、奄美(あまみ)諸島以南にすむコモノアラガイR. a. surnhoeiは殻がずっと細長く、したがって殻口も長く、軸唇のねじれが弱い。
[奥谷喬司]