カンテツ

改訂新版 世界大百科事典 「カンテツ」の意味・わかりやすい解説

カンテツ (肝蛭)
liver fluke

扁形動物吸虫綱の蛭状吸虫科に属する寄生虫の1種。日本に分布するものは,形態学上ヨーロッパ,オーストラリアに分布するカンテツFasciola hepaticaおよびアジア,アフリカ,ハワイなどに分布するキョダイ(巨大)カンテツF.giganticaの中間型に属する。ウシヒツジヤギなどの草食獣に多くみられるが,ヒトにも寄生する。虫体は体長20~30mm,体幅8~13mmにも達し,葉状をしているが,口吸盤の部分が突出して円錐状になっているのが特徴である。中間宿主ヒメモノアラガイのなかでセルカリアとなって水中に遊出し,水草などに付着して被囊幼虫メタセルカリア)となる。セリミョウガなどに付着したこの幼虫を経口摂取すると,小腸で脱囊し,腸壁を貫いて腹腔に出た後,肝臓の表面から侵入して肝臓組織に機械的傷害や壊死を起こし,感染後7~8週目に胆管に移行して,やがて成虫となる。胆管に移行するまでは,高熱,心窩部(しんかぶ)痛,好酸球増加などの症状を起こすことがあるが,移行後は,胆石様発作の原因となることがある。免疫学的診断法もあるが,検便や十二指腸ゾンデで胆汁内に154~171μ×82~95μの大型虫卵を検出すれば確実である。ウシの肝臓を生食して発症した例もあるので,ウシの消化管や肝臓に脱囊後間もない幼虫が存在した場合,感染源となる可能性があり,大都会でも症例がみられる。治療には,ビチオノールが有効である。
執筆者: なお家畜では,メタセルカリアが付着している稲わらやあぜ草を食べて感染するが,貧血,体重減少,浮腫発育障害,異常乳などの症状を示し,ウシやヒツジなど反芻(はんすう)家畜の生産・育成に著しく障害を与え,経済的損失もきわめて大きい。
寄生虫
執筆者:

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百科事典マイペディア 「カンテツ」の意味・わかりやすい解説

カンテツ(肝蛭)【カンテツ】

葉状の3cmにもなる大型のキュウチュウ類で,主として牛,ヤギなど草食獣の肝臓に寄生する。ヒトにもときに寄生し,重症になると肝硬変を起こす。中間宿主はヒメモノアラガイで,これから出る幼虫(セルカリア)が水草などに付着して被嚢幼虫(メタセルカリア)となり,これが口などから感染する。家畜に被害が多い。治療にはビオチノールを用いる。
→関連項目モノアラガイ

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普及版 字通 「カンテツ」の読み・字形・画数・意味

鉄】かんてつ

鉄をも通す強さ。

字通「」の項目を見る


【鑑】かんてつ

すみきる。

字通「鑑」の項目を見る


【刊】かんてつ

けずる。

字通「刊」の項目を見る


【患】かんてつ

うれい。

字通「患」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内のカンテツの言及

【幼生生殖】より

…幼生でありながら体内で卵が成熟し,単為生殖を行って新個体を生じること。寄生性のタマバエやカンテツの幼生にその例が知られている。扁形動物の吸虫類に属するカンテツのミラキディウム幼生は,水中を泳いでいる間に中間宿主であるモノアラガイの体内に入り,スポロシスト幼生となる。…

※「カンテツ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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