ヤマトリカブト(読み)やまとりかぶと

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤマトリカブト」の意味・わかりやすい解説

ヤマトリカブト
やまとりかぶと / 山鳥兜
[学] Aconitum japonicum Thunb. subsp. japonicum

キンポウゲ科(APG分類:キンポウゲ科)の多年草有毒植物で植物全体に毒を含むが、とくに根に多い。茎は高さ0.3~2メートルで直立あるいは斜め上に伸びる。葉は長さ5~18センチメートル、質は薄くあるいは厚く、3深裂から3中裂する。花は8~11月、茎の先や葉腋(ようえき)から出た総状花序あるいは散房花序につき、青紫色。花柄には細かい曲がった毛が密生する。本州中部の太平洋側地域(日光から赤城山、東京都多摩地方から愛知県東部)に分布し、低山の林縁草原に生える。名は、山地に生えるトリカブトの意味である。

[門田裕一 2020年3月18日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤマトリカブト」の意味・わかりやすい解説

ヤマトリカブト(山鳥兜)
ヤマトリカブト
Aconitum japonicum

キンポウゲ科の多年草。日本各地の山地に普通にみられる。地下に円錐形の太い根茎があり,これは毎年新しい根が横につくられて更新する。アルカロイドを含み,毒性が強い。まれに漢方薬に使われることもあるが用法がむずかしく,誤ると致死的で非常に危険である。茎は直立し,高さ 1m内外,上部の茎はやや曲り,しばしば分枝する。全体に無毛,葉は長い柄があり,3~5裂する掌状葉で,裂片に鈍い鋸歯がある。8~10月,茎の上方に短い円錐花序をつけ,鮮かな青紫色の花を多数つける。萼5個のうちかぶと状の萼は肉質で,中部の2個はやや円形内面に毛があり,下部の2個は小さい。袋果に毛がない。地方により変異が多く,いくつもの亜種変種に分けられる。分類のむずかしい群の一つである。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のヤマトリカブトの言及

【トリカブト(鳥兜)】より

…林の縁や林の中,草原に生え,温帯に多いが暖帯にも進出し,また高山帯にも普通にみられる。代表的なものには,エゾトリカブトA.yezoense Nakai,エゾノホソバトリカブトA.yuparense Takeda,オクトリカブトA.japonicum Thunb.(イラスト),ヤマトリカブトA.japonicum var.montanum Nakai(イラスト),キタヤマブシA.japonicum var.eizanense Tamura,ホソバトリカブトA.senanense Nakai,ハクサントリカブトA.hakusanense Nakai,カワチブシA.grossedentatum Nakai,サンヨウブシA.sanyoense Nakai,タンナトリカブトA.napiforme Lév.et Van’tなどがある。トリカブト属には約300の種があり,北半球の温帯以北に広く分布している。…

※「ヤマトリカブト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」