改訂新版 世界大百科事典 「ヤマボウシ」の意味・わかりやすい解説
ヤマボウシ
Cornus kousa Buerg.ex Hance
樹高15mに達するミズキ科の落葉高木。梅雨のころ,4枚の花弁状で白色大型の総苞片をもつ花を樹冠全体に咲かせる。庭園樹としてなじみの深いハナミズキとはごく近縁である。樹皮は赤褐色で鱗状に剝離する。葉は対生し,全縁でやや波打つ。秋に紅葉する。5月下旬~7月上旬,短枝状に必ず1対の側枝を伴った柄の長い,1個の花のようにみえる頭状花序を頂生する。小花は25~35個,花序の基部に4枚で大型の花弁のような総苞片がある。小花群の開花は6月,花弁,おしべともに4個,果実は各小花の子房,萼筒が癒合した球形の集合果で肉質。中に数個の種子を含む。北海道を除く日本各地,朝鮮,中国に分布するが,とくに済州島(韓国),雲仙,箱根に多い。花の観賞期間が長く,花木,公園樹として有望である。また赤紫色に熟れた果実は甘く食べられる。材は堅硬で強靱(きようじん),そのため農具,工具の柄や木槌,杵の材料とされる。近縁種は北アメリカに3種,東アジアからヒマラヤにかけて4ないし5種が分布する。いずれも頭状花序で大型の総苞片をもつが,果実の形態が異なる。北アメリカ産の3種は核果が数個ずつ集まってつき,ヤマボウシのような癒合した集合果とならない。とくに北アメリカ東部原産のハナミズキ(Cornus florida L.(英名dog-wood),別名アメリカヤマボウシ)はアメリカ合衆国の代表的花木の一つ。葉の展開に先立って樹冠が花でおおわれるため,ヤマボウシよりも華やかである。ハナミズキの総苞片は先が凹入するため両者の区別は容易である。ハナミズキは耐寒性が強く,半日陰でも毎年よく花をつける。土質は腐植質に富む肥沃な土壌が理想的。1912年,尾崎行雄東京市長がアメリカにサクラを寄贈したとき,返礼に送られた。
執筆者:八田 洋章
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報