日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤマグワ」の意味・わかりやすい解説
ヤマグワ
やまぐわ / 山桑
[学] Morus australis Poir.
Morus bombycis Koidz.
クワ科(APG分類:クワ科)の落葉樹。葉を養蚕用とするため広く栽培される。山地に生え、高さ10~15メートルに達するが、栽植しているものは毎年刈り込むため低木状をなしている。葉は互生し、質は薄く、縁(へり)に鋸歯(きょし)があり、卵形または広卵形で長さ8~20センチメートル、先は短くとがり、基部は円形または浅い心形で、1~3裂するものが多い。表面はほとんどつやがなくざらつき、裏面は脈の上に毛がある。雌雄異株であるが、同株のものもある。4~5月、新枝の下部に穂状花序を垂れ、淡黄緑色の細花を密につける。雄花穂は、長さ約2センチメートル、雌花穂はそれよりやや短い。萼片(がくへん)は4個で花弁がなく、雄花には雄しべ4本、雌花には雌しべ1本があり、花柱は先が2中裂する。果穂は、多肉質の宿存萼に包まれた痩果(そうか)が密についたもので、6~7月、赤色から紫黒色に熟し、多汁で甘味があり食べられる。北海道から九州、および樺太(からふと)(サハリン)、南千島、朝鮮半島、中国からインドまで広く分布する。材は堅く狂いが少なく、美しいつやがあるので、建築、器具、細工物に賞用する。樹皮は和紙の原料となり、根皮は利尿、緩下剤にする。
[小林義雄 2019年12月13日]