ユニコーン(英語表記)unicorn
Einhorn[ドイツ]
licorne[フランス]

精選版 日本国語大辞典 「ユニコーン」の意味・読み・例文・類語

ユニコーン

〘名〙 (unicorn) ヨーロッパに伝わる伝説上の動物。体は馬に似た形をし、額に長いねじれた一本の角が生えている。一角獣

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デジタル大辞泉 「ユニコーン」の意味・読み・例文・類語

ユニコーン(unicorn)

ヨーロッパの伝説上の動物。馬の体で、ねじれた1本つのをもつ。角には解毒する力があると信じられた。一角獣いっかくじゅう
ユニコーン企業

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改訂新版 世界大百科事典 「ユニコーン」の意味・わかりやすい解説

ユニコーン
unicorn
Einhorn[ドイツ]
licorne[フランス]

ヨーロッパで力と純潔の象徴とされる架空の動物で,〈一角獣〉と訳される。馬の額に長い角(しばしば螺旋状によじれた角)を生やし,山羊の髭,割れたひづめを持つ獣の姿で図像化される。紋章では白馬に角,山羊の髭であるが,伝承では体軀は白,頭部は赤く,青い目で白黒の一角を持つとするものもある。

 旧約聖書の《ヨブ記》39章9節以下では野牛の力の強さが語られ,《申命記》33章17節には〈彼の牛のういごは威厳があり,その角は野牛の角のよう,これをもって国々の民をことごとく突き倒し,地のはてにまで及ぶ〉とあるが,《七十人訳聖書》ではヘブライ語聖書の中の野牛が〈一角獣monokerōs〉と訳され,《ウルガタ》にもunicornisとして継承された。こうしてユニコーンにはたけだけしく強い動物のイメージが定着した。古典での最も古い叙述は前5~前4世紀のギリシアの歴史家,医師クテシアスによるもので,彼は〈白いロバ〉と呼んでいる。続いてメガステネスは,カルタゾオンなる,サイとおぼしいユニコーンについて記した。アリストテレスが《動物誌》第2巻で言及している〈インドのロバ〉はクテシアスからの引用である。ヘレニズム期にさかのぼると考えられている寓意的な民間博物学書《フュシオロゴス》にもユニコーンはとり上げられ,伝説の流布に大いにあずかった。

 このような古代伝承をひきついだ中世キリスト教会の伝承では,ユニコーンはあらゆる動物中最強のものだが清純な乙女のもとには柔順に近づきなれ親しむとされ,乙女の胸に寄っているところを刺し殺せると考えられていた。これが聖母マリアと教会とイエスの象徴であることはいうまでもない。ユニコーンの角は毒の力を消すとされたので,その角と考えられたイッカクの角は,削って服用されたり杯やナイフの柄にされた。このナイフの柄は毒が近づけば汗をかくと信じられた。J.シルバティによれば教皇パウルス3世は,疫病から身を守るため金貨1万2000枚を払ってユニコーンの角を手に入れたという。14世紀からフランス革命期まで,フランス宮廷の食卓ではユニコーンの角が食物中の毒の検証に使われた。

 パリのクリュニー美術館には,中部フランス,ブサックの城から来た中世末期のユニコーンと貴婦人題材とした有名な一連タピスリーがあり,リルケが詩に歌い《マルテの手記》でも言及している。ニューヨークのクロイスターズ美術館にある同様な図柄のタピスリーも有名である。なお,スコットランド王ジェームズ1世のシンボルがユニコーンであったため,現在のイギリス王家の紋章もライオンとユニコーンが盾を左右から支えている図柄である。
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百科事典マイペディア 「ユニコーン」の意味・わかりやすい解説

ユニコーン

西洋の伝承架空動物。ドイツ語でEinhorn,フランス語でlicorneといい,〈一角獣〉と訳される。1角をもつ馬に似た姿で描かれることが多い。伝承は聖書にさかのぼり,最強の動物で捕らえがたいが,処女(=聖母マリア)には馴れ親しむ。すなわちユニコーンをイエス・キリストに見立てるキリスト教的寓意譚もある。その角(実は海獣イッカクの牙)は解毒の効能があると信じられた。スコットランド王家の紋章に用いられているほか,タピスリー連作《一角獣を連れた貴婦人》(15世紀。パリ,クリュニー美術館蔵)はリルケの詩などでとりわけ名高い。
→関連項目麒麟

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ユニコーン」の意味・わかりやすい解説

ユニコーン
unicorn

一角獣ともいう。額に1本の長い角をもち,馬あるいは小羊に似るとされる伝説上の動物。アッシリア遺跡からその姿を描いたレリーフが発見されており,インド,中国の説話にも現れる。前4世紀ギリシアの自然学者クニドスは,インドの実在動物としてその角の薬効などを書いているが,これはさいのことらしい。キリスト教では聖書に現れる動物として親しまれているが,これは旧約聖書のギリシア語への翻訳の際,ヘブライ語で re'emと呼ぶ二角獣の1種をギリシア語 monokerōs (一角獣) と誤訳したことに始る。これが,処女でなければこの獣を捕えることができないという,インド説話と結びついて,聖母マリアに関係づけられ,中世にはさまざまな比喩的解釈が行われた。

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デジタル大辞泉プラス 「ユニコーン」の解説

ユニコーン

《Unicorn》イギリス海軍の航空母艦。同型艦なし。1943年3月就役。第二次世界大戦後に一度退役したが、1950年、朝鮮戦争勃発により再就役。1953年退役。

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世界大百科事典(旧版)内のユニコーンの言及

【角】より

… 他方,角は妙薬として珍重された。ギリシア・ローマ時代には,ユニコーン(一角獣)の角と誤って信じられたサイの角が,解毒剤や癲癇(てんかん)の治療薬として重視され,16世紀以降は鎖でつながれたイッカクの角が薬局の看板代りとなり,これを削って作った粉薬が売られた。また北方民族が古くから用いていた角杯は,毒が混入されると泡を出して解毒するといわれ,毒殺が流行した時代にはヨーロッパの王侯や貴族に広く使われた。…

【野人】より

… 一方,《ギルガメシュ叙事詩》で主人公ギルガメシュが野人エンキドゥと戦い無二の友としたように,古来,人間離れした力を持つ者を従者として味方につけ,畏怖しつつもこれを教化してその異能にあずかるという話も多い。中世ヨーロッパでユニコーンや野人がキリスト教の威光に容易には服さない野生の力の象徴とされ,これを捕らえ馴化することが教会の勝利の寓意であったのは,逆にいえばそのような力をとりこみ利用することでもある。また領主が信頼に足る騎士を養成すべく,しばしば山で見つかる捨子をひきとることも実際あったようで,アーサー王伝説や《神仙女王》に野人が登場するゆえんとなっているが,これも同様の心性に基づくものといえよう。…

※「ユニコーン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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