ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨブ記」の意味・わかりやすい解説
ヨブ記
ヨブき
Iyob; Book of Job
内容は『エゼキエル書』14章14,20にも言及されているヨブについての物語であり,(1) ヨブの信仰をめぐる神とサタンの賭けを契機としてヨブに訪れた試練(1~2章),(2) ヨブの災いを聞いて慰めるために彼のもとへ来たエリパズ,ビルダデ,ゾパルと,災いに苦しみ自分の生まれた日を呪うヨブとの対話形式による議論,3人の友人おのおのの,神をおそれ,全能者の懲らしめ(応報)を軽んじることなく神を求めよとの説教(3~13章),(3) 第4の友人エリフの説教(32~37章),(4) 神のヨブへの呼びかけ,創造者としての自己の啓示(38~41章),(5) ヨブの悔い改めとその繁栄の回復(42章)に分かれる。
ヨブ記の芸術的展開は,大きな影響力をもっている。詩文体による討論は,イスラエル以外にも起源をもつ古代の伝説の散文的枠組みの中でなされている。この伝説は,非常に敬虔で裕福な男ヨブに関するものである。サタンは,ヨブの敬虔さは単に彼の物質的繁栄に起因するものかどうかを試す役割を果たしている。しかし,彼の財産,子供たち,最終的には彼自身の健康さえも奪われるという,想像を絶するほどの損失にあいながらも,ヨブは神を呪うことを拒む。しばらくするとヨブの災いを聞いて,エリパズ,ビルダデ,ゾパルの 3人の友が彼を慰めにやって来て,この時点から詩的な対話が始まる。詩文体による討論は 3回にわたるそれぞれのスピーチからなり,それに対してヨブは 3人の友と論争し,最終的に神と語るという形式をとっている。交わされる討論はすべてヨブの試練の意味をつきとめるものであり,試練が与えられた理由とヨブがとるべき態度について説いている。3回ずつにわたる弁論で,ヨブは彼の潔白さと彼が受けている試練の不当性を主張する一方,彼の友はヨブはみずからの罪のために苦しめられているのだと論じる。自分の誠実さと正しさを確信してやまないヨブは,友のそのような説明に満足できない。しかし,ヨブと神との会話は,なぜ不当な試練が与えられるのかという問題の答えを得ずして,この極度の緊迫状況を解いてくれる。神が人を取り扱われる方法は依然謎に満ち,不可解であるけれども,この世において神のなされるわざには意味があるという信仰を,ヨブは神との会話において再びもつにいたる。(→知恵文学)
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