ヨウ素滴定(読み)ヨウソテキテイ

化学辞典 第2版 「ヨウ素滴定」の解説

ヨウ素滴定
ヨウソテキテイ
iodometry, iodometric titration

ヨウ素が反応にあずかる酸化還元滴定をヨウ素滴定という.ヨウ素を酸化剤として使用する場合はヨウ素酸化滴定,またヨウ化カリウム還元剤として使用する場合をヨウ素還元滴定という.ヨウ素酸化滴定の標準液は,精製したヨウ素を少量のヨウ化カリウム溶液に溶解した後,水で薄めたもの.褐色の瓶に入れて冷暗所に保存する.亜ヒ酸標準液またはチオ硫酸ナトリウム標準液で標定する.酸性~微アルカリ性溶液で使用し,終点はヨウ素-デンプン反応を用い,青色を終点とする.Sn2+,Sb2+,S2-,SO32-,S2O32-ヒドラジンなどの定量に使用される.ヨウ素還元滴定は,ヨウ化物イオンを酸化剤と反応させ,生成するヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定する間接的酸化還元容量分析法である.標準液は,少量の炭酸ナトリウムを加えて煮沸し,冷却した水にチオ硫酸ナトリウムを溶解したもの.ヨウ素酸カリウム標準液で標定する.デンプン溶液の青い着色が消える点を終点とする.Cl2,Br2,ClO3,BrO3,IO3,H2O2,SeO2,TeO2,CrO42-,Cu2+,Ce4+,Fe3+ の定量に使用される.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨウ素滴定」の意味・わかりやすい解説

ヨウ素滴定
ようそてきてい
iodometric titration

ヨウ素の関係する酸化還元滴定。この反応は可逆反応である。

  I2+e-2I-
ヨウ素の酸化作用はあまり強くなく、強い還元剤に対してのみ酸化剤として働きヨウ化物イオンを生じ、逆に強い酸化剤に対してはヨウ化物イオンが電子を放出してヨウ素を生じる。普通にヨウ素滴定というときは、ヨウ素の酸化力を利用する前者の場合(これをヨウ素酸化滴定、ヨーディメトリーiodimetryという)と、ヨウ化物イオンの還元力を利用する後者の場合(これをヨウ素滴定、ヨードメトリーiodometryという)に分けられる。

 ヨウ素は昇華法で精製できるので一次標準物質となりうるが、無水亜ヒ酸(As2O3、一次標準物質)を用い、4<pH<9に保ってヨウ素標準溶液の標定を行うことがある。ヨードメトリーの場合、遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウムの標準溶液で滴定する。この方法は酸化力のある物質の定量に広く適用できる。

 ヨウ素滴定においては、指示薬はデンプンを用いる。可溶性デンプン(主成分はα-アミロース)はI2と、よく知られたヨウ素デンプン反応をして濃い青紫色を呈する。したがってヨウ素滴定においては、溶液がわずかに青紫色を呈するところを終点とする。

[成澤芳男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨウ素滴定」の意味・わかりやすい解説

ヨウ素滴定
ヨウそてきてい
iodometric titration

強い還元性物質,たとえば硫化水素亜硫酸などを,ヨウ素の標準溶液を用いて滴定する方法を,直接ヨウ素滴定,ヨージメトリーまたはヨウ素酸化滴定という。これに対して酸化性物質,たとえば2価の銅,3価の金,3価の鉄などに過剰のヨウ化カリウムを加え,遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウムの標準溶液を用いて滴定する方法を,間接ヨウ素滴定,ヨードメトリーあるいはヨウ素還元滴定という。直接および間接ヨウ素滴定を一括してヨウ素滴定という。終点の決定にはヨウ素デンプン反応による青紫色の着色または脱色を利用する。

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栄養・生化学辞典 「ヨウ素滴定」の解説

ヨウ素滴定

 酸化還元滴定法の一つで,ヨウ素 (I2) が還元されやすい性質を利用する.I2をデンプンと反応させて定量することがある.

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