翻訳|Job
旧約聖書の《ヨブ記》の主人公。過酷な試練に耐え,信仰を堅持した人物として知られる。同じく旧約聖書の《エゼキエル書》の14章14節,20節にはノア,ダニエルとともに,古来有名な義(ただ)しい人の典型として出てくる。このことは同時にヨブが元来狭い意味のイスラエルの伝統外の人物であったことを意味する。なぜならノアが世界的な大洪水の主人公であり,ダニエルが前2千年紀中ごろのシリアのウガリトの叙事詩にそれに対応する人物名として比較的近年発見されたように,ヨブ伝承も本来のイスラエルのわく外のものと思われるからである。旧約の《ヨブ記》においてもヨブはイスラエル外の人物で,その3人の友人たちもそうである。ヨブの出身地とされるウズは正確には比定できないが,アラムないしエドムに属するらしい(《ヨブ記》1:1,《創世記》10:23,同36:28,同4:21参照)。ヨブという名前の意味もはっきりわからない。内容的には《ヨブ記》参照。
執筆者:関根 正雄
初期の美術表現としては,ドゥラ・ユーロポス(シリア)のシナゴーグ壁画(3世紀後半)や《ユニウス・バッススの石棺》浮彫(359ころ)に,苦悩に耐えるヨブと3人の友人たちの場面が見られる。この苦悩の場面では,ヨブは裸あるいは短い衣を着け,ひげを生やした禿頭の老人として表されることが多い。7世紀ころ以降は場面の数もふえ,聖書写本挿絵などに,息子たちの死,ヨブに不幸を知らせる使者,ヨブを腫物で苦しめるサタン,堆肥の上に座るヨブとその友人や妻,再び幸福になるヨブ,などの場面が描かれた。堆肥の表現は,初期聖書中の〈灰〉の誤訳による。(図)
執筆者:浅野 和生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
『旧約聖書』の「ヨブ記」の主人公。旧約の「エゼキエル書」によれば、彼はノアおよびダニエルと並ぶ3人の義人の代表者に数えられる(14章14、20節)。そして「ヨブ記」において、彼は義人であったが、サタンの試みにあい、すべての財産、家庭および健康を失い、自己の生を呪(のろ)う。これに対しヨブの友人たちは、彼の不幸が罪の結果であり、彼に悔い改めを忠告する。しかし彼は、友人の、応報観に根ざした常識的な説得にいっそう苦悩し、神の義がどこにあるかを模索する。このような苦悩は、亡国離散の民ユダヤ人のそれを反映する。
[定形日佐雄]
『中沢洽樹著『ヨブ記のモチーフ』(1978・山本書店)』
「ヨブ記」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…一方,同じ時期に発表されたファリャの《恋は魔術師》(1915)と《三角帽子》(1919)は,民族的色彩の濃いバレエ音楽として知られる。さらに1930年代以降にもボーン・ウィリアムズの《ヨブ》(1930),プロコフィエフの《ロミオとジュリエット》(1936)と《シンデレラ》(1944)などがあり,バレエ音楽は20世紀音楽の主要なジャンルとして定着するにいたった。 日本では,1910年代後半から20年代初めにかけて山田耕筰が石井漠,小山内薫の協力を得て創作した舞踊詩(《青い焰》《マリア・マグダレーナ》《野人創造》)がある。…
…しかし知恵文学の通常の見方である因果応報の原理が現実に合わないことがしだいにはっきりし,イスラエルの歴史も隆盛期を過ぎて,その点からも懐疑的な気持ちが一般的となった時代の作品であることは明らかである。義人ヨブに試練として下った苦難というモティーフはきわめて旧約的であるが,その問題解決は本書のわくをなす散文の部分(1:1~2:13,42:7~17)と,本論というべきこのわくにはさまれた詩文の部分で異なることは注意して読めばすぐわかる。散文の部分がより古いものであることは諸説の一致するところである。…
※「ヨブ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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