改訂新版 世界大百科事典 「ライニア」の意味・わかりやすい解説
ライニア
Rhynia
古生マツバラン類(無葉類)に属する絶滅シダ植物の1属で,ライニー植物群の主要植物。リニアともいう。名は発見されたスコットランドのライニーRhynieにちなむ。約4億年前のデボン紀前期の植物で,葉のない裸の茎が二叉(にさ)分枝を繰り返し,先端に胞子囊をつけている。匍匐(ほふく)する地下茎から地上茎が直立している。大型の高さ50cmくらいのライニア・マヨールR.majorと,小型の高さ20cmくらいのライニア・ギンボニイR.gwynne-vaughaniの2種がとくによく知られている。前者の茎は径6mmくらいで原生中心柱をもち,先端には12mmくらいの長楕円形の胞子囊をつけている。この地上茎は,平滑で気孔がまばらに配列された表皮細胞で覆われていることから,緑色で光合成を行っていたと考えられている。ギンボニイ種は不定芽をもつことが特徴で,この不定芽で繁殖できたと考えられている。大型のマヨール種が造胞体で,小型のギンボニイ種が配偶体であると考える学者もある。イギリスのウェールズから報告されたクックソニアCooksoniaはライニアより古く(シルル紀末),最古の陸上植物である。これはライニアより小型で10cmくらい,二叉分枝する裸枝の先端に幅広の胞子囊をもっている。ライニア,クックソニア,ホルネオフィトンHorneophytonなどをまとめてライニア目とし,陸上植物最古の目と考えられている。主茎をもって,より進化した形態を示すプシロフィトン以降の植物は,このライニア目より由来したものと考えられている。日本からは未発見である。
執筆者:浅間 一男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報