翻訳|Lazarus
キリストの友人。マリアとマルタの兄弟。エルサレム郊外のベタニアに住む。《ヨハネによる福音書》第11章によれば,病のため死去したが,その4日後,布教先から帰ったキリストが,墓の前で祈り呼びかけると,奇跡的に蘇生した(ラザロの復活)。キリストの死後も福音伝道に尽くし,伝説上の殉教地は,西方ではマルセイユ,東方ではキプロス島とされる。プロバンスやブルゴーニュ地方でとくに崇敬され,マルセイユ,オータンなどに彼を記念した教会(サン・ラザール)がある。癩病患者,癩病院,こじき,葬儀人夫などの守護聖人。美術作品では,帽子をかぶり,十字架を持つことが多い。初期キリスト教時代から,復活の奇跡にあやかることを願って,墓所,祈禱所などに描かれた。古今に作例の多い〈ラザロの復活〉は,全身を埋葬用の布で巻かれたまま,墓から出てくる場面で,一般に福音書の記述に従って,見物の一人は悪臭に鼻を押さえている。祝日は12月17日。
執筆者:井手 木実
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…そのなごりは,サンタンドレ門,アルー門,ガリア最大の劇場跡などにみられる。マルセイユからもたらされたラザロのものと伝えられる聖遺物を収めるため,12世紀初めに建立されたサン・ラザール大聖堂は,失われたクリュニー第3聖堂の様式を踏襲するブルゴーニュ派ロマネスク建築の代表例。その正面扉口大タンパンや内部の柱頭は,ロマネスク彫刻の頂点の一つ。…
…石棺の浮彫には,クリスモンと月桂冠を飾った十字架の両側に,2人の眠る兵士(イエス・キリストの墓を見守るためにつかわされた兵士)を配し,〈復活〉の図像であることを示唆する表現が見いだされる。また新約聖書の〈ラザロの復活〉,旧約聖書のダニエルやヨナの物語などが〈復活〉の予型として用いられることもある。墓を訪れる2人または3人の聖女たちによってこの主題を間接的に表す方法は,西欧中世において早くから用いられた。…
…中世のヨーロッパの都市においては,癩に罹患した者は当局に届け出たうえ,厳重に審査され,癩者と診定が下されると,市民権を剝奪(はくだつ)され,市外の癩者専用の収容所レプロサリウムleprosariumに送られた。ここはラザレットlazaretto(《ルカによる福音書》16:19~31に出てくる,全身はれものに侵された乞食ラザロに由来する語。乞食収容所,後には検疫所をも意味した)とも呼ばれ,癩が蔓延しはじめた11世紀以後,ヨーロッパ各地に設立された。…
※「ラザロ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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