翻訳|lysine
塩基性α(アルファ)-アミノ酸の一つで、リシンともいう。略号はLysまたはK。L-リジンはタンパク質を構成するアミノ酸の一つで、ほとんどすべてのタンパク質に含まれているが、とくにヒストン、アルブミン、筋肉タンパク質に多く含まれている。ヒトにとっては必須アミノ酸(ひっすあみのさん)の一つで、体内では合成できない。微生物ではアスパラギン酸から、酵母ではアセチル補酵素Aとα-ケトグルタル酸とから、10段階ほどの変化を経て合成される。分解も種によって非常に異なり、カビや酵母ではグルタリル補酵素Aを経てアセチル補酵素Aに分解する。リジンの5位(カルボキシ基の炭素を1と数えて5つ目の炭素)がヒドロキシ化されたヒドロキシリジンとD-ガラクトースとの間のO-グリコシド結合は糖鎖(グルコースやガラクトースなどの糖が鎖状に連なった物質)がタンパク質に結合する様式の一つである。リジンのε(イプシロン)-アミノ基のアセチル化がおきるとタンパク質の機能が変化する。
化学式はNH2(CH2)4CH(NH2)COOHで、分子量146.19。水で結晶化させると、針状結晶となる。分解温度は224.5℃で、水によく溶け、アルコールには溶けにくく、エーテルには溶けない。
なお、リシンricinはアルブミンに属する毒性タンパク質で、トウゴマの種子(ヒマ子(し))に含まれる。
[降旗千恵]
リジンは動物性タンパク質には多いが、穀類タンパク質には少なく、不足しやすいアミノ酸である。このため小麦粉製品にリジンの強化が勧められている。リジンの末端のアミノ基は糖と反応しやすく、食品を褐変させる。他の化合物と結合したリジンは栄養上有効でなくなるので、非有効性リジンとして区別される。
[宮崎基嘉]
『船山信次著『アルカロイド――毒と薬の宝庫』(1998・共立出版)』
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