六訂版 家庭医学大全科 「リッサウイルス感染症」の解説
リッサウイルス感染症
リッサウイルスかんせんしょう
Lyssavirus infection
(感染症)
どんな感染症か
多くの場合、リッサウイルスに感染したコウモリに咬まれて発症します。リッサウイルスが報告されている地域では、コウモリ(感染源動物)との接触を避けることが発症予防につながります(表6)。
症状の現れ方
発症した患者さんは、狂犬病でみられるような「発熱、食欲不振、
病態は急性かつ進行性で、けいれんや攻撃的な神経症状が次第に強くなって持続し、四肢の
標準的な潜伏期間は、狂犬病ウイルスと同様に20~90日です。オーストラリアで1998年に報告された事例では、コウモリによる咬傷を受けてから27カ月後に発症しています。
検査と診断
狂犬病と同様に、発症するまでウイルスも抗体も検出することができません。検査は、神経組織のウイルス抗原、もしくは遺伝子を検出します。ウイルスの抗原性や遺伝子配列の違いで、狂犬病との区別が可能です。
診断は、患者さんの海外渡航歴、感染源動物との接触
治療の方法
基本的に、狂犬病に準じます。現在、リッサウイルス感染症に対して有効な治療方法はなく、予防を目的としたワクチンや免疫グロブリンもありません。
狂犬病ワクチンによって、オーストラリアコウモリリッサウイルスの発症予防が可能です。ラゴスコウモリウイルス、ドゥベンヘイグウイルス、ヨーロッパコウモリリッサウイルスは、抗原性が狂犬病ウイルスに類似しており、予防効果があります。モコラウイルスの感染に対しては、狂犬病ワクチンとの交差反応がみられないため、予防効果はないと考えられています。
病気に気づいたらどうする
受診する診療科は、基本的に狂犬病に準じるので、保健所に海外渡航歴や感染源動物との接触履歴などを説明して、適切な診療機関を相談します。
関連項目
井上 智
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報