化学辞典 第2版 「リン酸水素カルシウム」の解説
リン酸水素カルシウム
リンサンスイソカルシウム
calcium hydrogenphosphate
リン酸二水素カルシウムとリン酸水素カルシウムの二つがある.【Ⅰ】リン酸二水素カルシウム((mono)calcium dihydrogenphosphate):Ca(H2PO4)2(234.05).略称MCP.第一リン酸カルシウムともいう.リン酸にリン酸三カルシウム溶液から,またはリン酸の酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムによる中和により一水和物[CAS 10031-30-8]として得られる.一水和物を180 ℃ に加熱すると無水和物になる.一水和物は,無色の三斜晶系の柱状結晶.密度2.22 g cm-3.溶解度1.8 g/100 g 水(30 ℃).エタノールに不溶.水溶液は強酸性を示す.無水和物は,無色の三斜晶系柱状結晶.密度2.55 g cm-3.一水和物の純粋なものには潮解性はないが,微量のリン酸のような不純物が存在すると吸湿性である.水溶性のため肥料として重要である.そのほか,醸造用発酵助剤,ベーキングパウダー助剤,食品のカルシウムの補給,医薬原料,家畜飼料の添加剤などに使用される.[CAS 7758-23-8]【Ⅱ】リン酸水素カルシウム(calcium (mono)hydrogenphosphate):CaHPO4(136.06).略称DCP.第二リン酸カルシウムともいう.リン酸二水素ナトリウムとリン酸二水素カリウムの水溶液に,塩化カルシウム水溶液を加え,pH を4~5に保つと二水和物として得られる.工業的には,石灰乳をリン酸で中和してつくる.二水和物[CAS 7789-77-7]は,無色のりん片状の六方晶系または斜方晶系結晶.密度2.31 g cm-3.水に難溶,エタノールに不溶,塩酸,硝酸に可溶.36 ℃ 以上で徐々に無水和物になる.無水和物は,三斜晶系結晶.密度2.892 g cm-3.水に難溶,塩酸,硝酸に易溶.二酸化炭素を含む水には少量溶ける.歯磨き用研磨剤として二水和物が大量に使用されている.ベーキングパウダー助剤,食品のカルシウム補給,医薬原料,動物飼料の添加剤などとして使用される.[CAS 7757-93-9]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報