日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルーカス」の意味・わかりやすい解説
ルーカス(George Lucas)
るーかす
George Lucas
(1944― )
アメリカの映画監督、製作者。カリフォルニア州モデストに生まれる。南カリフォルニア大学映画科を経て、フランシス・コッポラの製作による『THX1138』(1970)で監督デビューし、『スター・ウォーズ』(1977)を世界的にヒットさせた。その後、『スター・ウォーズ』シリーズや監督のスピルバーグと組んだ『インディ・ジョーンズ』シリーズなど、製作を活動の主体に置き、特殊効果をふんだんに盛り込んだ冒険ファンタジーが主体となるハリウッド映画の動向に大きな影響を与えた。『スター・ウォーズ』をきっかけに、特殊効果を専門とするインダストリアル・ライト&マジック社(ILM)を設立、1980年代初頭にCG部門を開設してピクサー・アニメーション・スタジオの母体をつくった。その一方、上映施設の音響機器の特性から館内の残響・遮音に至るまで厳しい基準を設定し、自作の高品質な音響が映画館でも再現できるよう意図したTHXプログラムを展開。その影響は上映フィルムの品質管理ばかりか、DVDやブルーレイディスクなどの家庭用ソフトやプレイヤーやプロジェクターなどの品質にまで及んだ。
1999年には22年ぶりに『スター・ウォーズ』シリーズの第4作で最初の物語にあたる『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(脚本・監督・製作総指揮)を発表。その後も同様に『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002)、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005)をつくるとともに、『スター・ウォーズ』の3D化、映画のデジタルデータ化による、フィルムを使わない映画館デジタル上映構想を推進している。
[出口丈人]
『トーマス・G・スミス著、石上三登志監訳『ジョージ・ルーカスのSFX工房』(1987・朝日新聞社)』▽『デール・ポロック著、光山昌男訳『ジョージ・ルーカス――ハリウッドを超えた映像帝国若き成功者』(1989・学習研究社)』▽『チャールズ・チャンプリン著、秦新二訳『ジョージ・ルーカス――ルーカスフィルム20年の軌跡』(1993・キネマ旬報社)』▽『秦新二編著『ジョージ・ルーカスの大博物館』(1993・文芸春秋)』▽『『スター・ウォーズ・クロニクル』(1995・竹書房)』▽『ゲリー・ジェンキンズ著、野田昌宏訳『ルーカス帝国の興亡――「スター・ウォーズ」知られざる真実』(1998・扶桑社)』▽『『「スター・ウォーズ」とジョージ・ルーカス 総特集』(1999・河出書房新社)』▽『ジョン・バクスター著、奥田祐士訳『ジョージ・ルーカス』(1999・ソニーマガジンズ)』
ルーカス(Robert E. Lucas, Jr.)
るーかす
Robert Emerson Lucas, Jr.
(1937―2023)
アメリカの経済学者。新しい古典派経済学の代表的な学者である。ワシントン州ヤキマ生まれ。1959年にシカゴ大学で歴史学の学士号を得た後、経済学に転じ、1964年に同大学で経済学博士号を取得。カーネギー工科大学(現、カーネギー・メロン大学)などを経て、1975年からシカゴ大学教授。合理的な経済主体は将来予想の形成に関して利用可能な情報を最大限活用して最善の予測を行うという「合理的期待仮説(rational expectations hypothesis)を経済モデルに導入してマクロ経済分析を変革し、経済政策に対する理解を深めた」との理由で、1995年のノーベル経済学賞を受賞した。
1972年に論文「Expectations and the Neutrality of Money」を発表し、裁量的な財政・金融政策による景気刺激策が有効だとするケインズ経済理論を批判し、政策無効命題を掲げて、景気低迷とインフレーションが同時に進行した1970年代に注目を浴びた。人々は情報を最大限に活用して期待を形成するので、合理的期待を織り込んでいない計量モデルによる将来予測は当たらないとの仮説は、各国の政策に大きな影響を及ぼした。
[金子邦彦]
『清水啓典訳『マクロ経済学のフロンティア』(1988・東洋経済新報社)』