レンプクソウ(読み)れんぷくそう

改訂新版 世界大百科事典 「レンプクソウ」の意味・わかりやすい解説

レンプクソウ (連福草)
Adoxa moschatellina L.

林の中にはえるレンプクソウ科の小さい多年草。花が特殊な形態をしており,とくに萼と花冠の形態学的な解釈について多くの議論がある。全体に細くてやわらかい。細い地下茎を出してふえ,それによって地上茎が互いにつながっているため連の名があるが,〈福〉の意味についてはよくわかっていない。あるいは〈花〉とも考えられる。中国では5個の花がつくため五福草という。葉は3出複葉で,根出葉は互生し,茎葉は対生で,1対つく。花は地上茎の先に5個がかたまってつき,黄緑色で,3~5月に咲く。5個の花のうち,茎の先端につく一つの頂花は上を向き2数性,他の側花は横を向いていて3数性である。萼裂片は前者では2枚,後者では3枚あり,合弁花冠の裂片は萼裂片の倍数となっている。ただし側花では背腹性と関係して,背側の2裂片が合着して1枚となるため,花冠裂片は普通5枚である。おしべの数も花冠裂片の2倍で,葯も半葯となっていて,4~5本のおしべがそれぞれ縦に分裂したと考えられている。子房中位で,頂花では4室,側花では5室あり,各室に1胚珠が入っている。花柱の数は子房室の数と一致する。北半球温帯に広く分布し,日本では近畿以東の本州北海道にある。

 レンプクソウ科Adoxaceaeはこれまで1属1種とみなされていたが,最近中国から2属2種が新たに報告された。レンプクソウ科はスイカズラ科のニワトコ属,ユキノシタ科ネコノメソウ属などとの類縁が示唆されているが,まだよくわかっていない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「レンプクソウ」の意味・わかりやすい解説

レンプクソウ
れんぷくそう / 連福草
[学] Adoxa moschatellina L.

レンプクソウ科(APG分類:ガマズミ科)の多年草。全草柔らかい。地下茎によって地上茎どうしがつながるので、この名がある。高さ8~15センチメートル。葉は3出複葉。3~5月、黄緑色花を開く。茎の先に5個集まって開くため、中国では五福草という。北海道から九州北部、および北半球の温帯に分布する。レンプクソウ科は2属3種のみの小さな科である。

福岡誠行 2021年12月14日]

 形態学的な研究と分子系統学的な研究からスイカズラ科に含まれていたガマズミ属とニワトコ属などがレンプクソウ科に含まれるようになった。2017年の国際植物会議で名称がガマズミ科Viburnaceaeに変更された。この分類によると世界に5属194種あり、日本には3属19種が分布する。

[編集部 2021年12月14日]

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