日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロイヤル・コート劇場」の意味・わかりやすい解説
ロイヤル・コート劇場
ろいやるこーとげきじょう
Royal Court Theatre
ロンドンのスロウン・スクエアにあるイギリスの劇場。近くにあった同名の劇場を受け継いで1888年に開場。20世紀に入って1904年からの3年間、プロデューサーのジョン・E・ベドランJohn E. Vedrenne(1867―1930)が演出家ハーリー・グランビル・バーカーと組んでこの劇場でジョージ・バーナード・ショーの演劇を積極的に上演するなど、イギリス近代劇を根づかせるための実験上演を続けた。これが、演劇史上に名を残すベドラン・バーカー・マネジメントである。その後もウェスト・エンドの商業劇場と一線を画する舞台が続いたが、やがて勢いが衰え映画館になり、第二次世界大戦の空襲で手痛い被害を受けた。戦後の復興も遅れていたが、1952年に拡張のうえ再開された。56年にはジョージ・ディバインGeorge Divine(1901―66)の率いる「ステージ・ソサエティ(舞台協会)」の本拠劇場となった。新人作家の発掘を主要目標とするこの劇団が同年5月8日に上演したジョン・オズボーンの『怒りをこめてふり返れ』によってイギリス演劇に「革命」が起こり、ロイヤル・コートは一躍世界的に著名となった。以降、アーノルド・ウェスカー、ジョン・アーデンらの新鮮な作品が続々上演され、イギリス現代演劇革新のメッカとなった。続いてエドワード・ボンドやデイビッド・ストーリーなどがもり立て、ウェスト・エンドの演劇街を離れていながらもこの劇場はイギリス演劇史に一時期を画した。69年には実験用の小劇場アップステアズが併設された。
[中野里皓史・大場建治]
『大場建治著『ロンドンの劇場』(1975・研究社出版)』