ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウェスカー」の意味・わかりやすい解説
ウェスカー
Wesker, Sir Arnold
[没]2016.4.12. ブライトン
イギリスの劇作家。労働者階級,特に自身のユダヤ系としての生い立ちにかかわる人々の日々の暮らしを探究し,1950年代後半イギリス文学の「怒れる若者たち」の一人に位置づけられた。調理師など多数の職業を転々としながら,先鋭な社会的関心を身につけた。40作をこえる戯曲を書き,特に労働者階級の生活を扱ったウェスカー三部作と称される『大麦入りのチキンスープ』Chicken Soup with Barley(1958),『根っこ』Roots(1959),『ぼくはエルサレムのことを話しているのだ』I'm Talking about Jerusalem(1960)によって認められた。1963年,イギリス空軍での勤務経験を元に執筆した "Chips with Everything"(1962)が初めてブロードウェーで公演された。ほかの戯曲作品に第一作の『調理場』The Kitchen(1957。1961映画化),『四季』The Four Seasons(1965),ウィリアム・シェークスピアの『ベニスの商人』を登場人物であるユダヤ人の金貸しシャイロックの視点から再考した "The Merchant"(1977。のち "Shylock"に改題)などがある。詩,短編小説,エッセイも手がけ,自叙伝 "As Much as I Dare"(1994),小説 "Honey"(2005)などの著作もある。2006年ナイトに叙された。(→イギリス文学)
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