ボンド(読み)ぼんど(英語表記)Edward Bond

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボンド」の意味・わかりやすい解説

ボンド(Edward Bond)
ぼんど
Edward Bond
(1934―2024)

イギリス劇作家労働者階級の子としてロンドンに生まれ、工場などに勤めながら戯曲を書いた。1962年『法王の結婚式』がロイヤル・コート劇場で上演され、ついで『救われた』(1965初演)で注目されたが、劇中、不良少年たちが乳母(うば)車の赤ん坊に石を投げて殺す場面が物議を醸し、上演禁止処分を受けた。しかし、これが一つの契機となってイギリス劇壇の検閲制度が廃止され、また彼はハロルド・ピンターらと並んで1960年代のイギリス演劇を代表する劇作家の一人となった。以後ビクトリア女王とその宮廷を風刺した『早朝』(1968)も上演中止となったが、このほか日本人バショー(芭蕉)を主人公とする『奥の細道』(1968)、シェークスピアの『リア王』を暴力的な闘争劇に改作した『リア』(1971)、晩年のシェークスピアを扱った『ビンゴ』(1973)、エウリピデスの『トロイアの女』を下敷きにした『女』(1978)、『いくつもの世界』(1979)、『王政復古』(1981)、『夏と寓話(ぐうわ)』(1982)、『戦争三部作』(1985)、『二編のポスト・モダン劇』(1990)など、力強い実験精神をグロテスクなユーモアで包みながら現代文明のゆがみを衝撃的に描いて精力的な活動を続けた。

[中野里皓史・大場建治]

『『現代演劇・90――特集エドワード・ボンド』(1980・芸術社新社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボンド」の意味・わかりやすい解説

ボンド
Bond, Edward

[生]1935.7.18. ロンドン
イギリスの劇作家。多くの習作を経て,『救われて』 Saved (1965年の公演は上演禁止となり,69年再演) ,『朝まだき』 Early Morning (68) ,『奥の細道』 Narrow Road to the Deep North (68) ,『リア』 Lear (71) などを発表,現代社会における暴力や狂気の問題を追究した作品が多い。ほかに,核戦争後を描いた"The War Plays" (85) など。

ボンド
Bond, Sir Edward Augustus

[生]1815.12.31. ミドルセックス
[没]1898.1.2. ロンドン
イギリスの古文書学者。 1833年イギリス公文書館に入り,38年大英博物館手稿文書部に移った。 66年同部部長。 78~88年大英博物館館長。蔵書目録の出版などに尽力。この間 E.トムソンとともに古文書学会を創設。伝統的古文書学に近代科学の方法を導入し,近代古文書学の規範的分類法を確立した。

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