翻訳|ropeway
架空索道,空中ケーブルカーともいう。空中に鋼索(ワイヤロープ)を張り,それに搬器を懸垂して旅客あるいは貨物をのせ,移動させて輸送を行う設備である。日本では広義の鉄道に分類され,法的には鉄道事業法によって規制される。
ロープウェーの起源は古く,動力に人力または畜力,ロープに植物性繊維を用いる方式は,中世以来と伝えられる。日本でも,飛驒の籠(かご)渡し,木曾の野猿渡しなど,原始的なロープウェーが早くから存在した。ロープウェーの近代化は,動力に水車や蒸気機関を用い,細い鋼線をより合わせるワイヤロープの発明によって促進され,電動機の普及が広範囲にわたる実用化を促し,観光開発の有力手段となった。搬器が空中を移動するため用地取得に伴う制約が少なく,急こう配に対応しやすい利点によって,山岳部での交通機関として,ロープウェーは注目されてきた。また水上・海上ロープウェーの建設も可能で,実用例も存在する。
日本では,1890年代に足尾銅山で貨物輸送に活用されて好評を博し,鉱山用,林業用を主体に各地へ普及した。旅客輸送の手段となったのは1920年代後半以降である。旅客用ロープウェーは安全性確保の必要から多くの制約を伴うが,空中からの展望が観光に好適で,60年代以降,急速な技術開発によって輸送能力を向上し,山岳交通機関の中では,ケーブルカー(鋼索鉄道)に匹敵する地位をうるに至った。貨物用ロープウェーは,山岳自動車道路の建設,トラックの大型化に押されてあまり使用されなくなった。97年3月末現在,日本全国で189ヵ所に旅客用ロープウェーが存在する。なお,いす式の搬器に旅客を収容する夏山リフト,スキーリフトなどは,広義のロープウェーと解される。世界的には,ヨーロッパ・アルプスがロープウェーの本場で,モン・ブラン山塊では標高3842mに達する事例も存在する。
執筆者:中川 浩一
ロープウェーは,走行様式により交走式,循環式にわけられ,またケーブルの使用本数により単線式,2線式,3線式,4線式がある。交走式はいわゆるつるべ式で,山頂停留場は起動停留場ともなり,そこの電動機によってケーブルをまき上げる。ケーブルの一端に取り付けてある搬器は,山ろく停留場から山頂停留場へ向かって引き上げられ,逆の一端に取り付けられた搬器は反対に山ろく停留場に向かうことになり,片方の搬器がどちらかの停留場に到着したとき,もう一方の搬器はもう一方の停留場に到着する。循環式はケーブルのうち少なくとも1本が両端停留場の間をループ状となってつねに一定方向に移動するもので,山頂停留場に電動機があるのがふつうであるが,両端停留場間に高低差のほとんどないものも存在する。複数の搬器がケーブルにひかれて両端停留場の間を往来し,停留場ではケーブルとともに停止しないものもあるが,移動するケーブルから一時はずして停止させて人と物の乗降,積卸しをするものもある。以上の2種のうち,交走式は構造は簡単だが搬器は2個が限度なので輸送力はごく小さい。一方,循環式は構造が複雑になるが,搬器はかなり多数使用することが可能なので輸送力を大きくすることができる。
単線式は1本のケーブルが搬器の重量を支持しかつ移動させるものである。2線式では1本が支持索,1本が曳索として用いられる。この場合,支持索は,搬器の重量を支持するのみで移動せず,搬器の上部に装着された溝付車輪が支持索の上を転走することになる。曳索はそれぞれの搬器に結合されており,電動機でこの曳索を移動させることによってすべての搬器が移動する。搬器を停留場で停止させる場合は,つねに移動している曳索から搬器を一時はずす。3線式は2本が支持索および曳索となり,他の1本が補助曳索または2本目の主曳索となる。4線式は支持索,曳索がそれぞれ2本ずつである。3線式,4線式は安全度を高めるための方式とされている。
以上がロープウェーの種類であるが,いずれもケーブルは空中に架けわたされるので,支柱をたてることになる。単に両端停留場のみの場合もあるが,長距離に及ぶものなどでは途中に何本かの中間支柱をたて,その上部には溝付車輪をつけて曳索が移動できるようにしている。
執筆者:八十島 義之助
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
地上にレールを敷設せず、斜面に立て並べた鉄塔に鋼鉄製のロープを張り、屋根の上に滑車をつけたゴンドラや椅子(いす)状の搬器をロープにかけ、曳索(えいさく)というもう1本のロープで引っ張って急斜面を上下させる乗り物。架空索道、空中ケーブルともいう。用地買収が少なくてすむので、建設費はケーブルカーの半分程度である。法令上は、扉を有する搬器を使用して旅客または貨物を輸送する普通索道、椅子式搬器を使用して旅客を輸送する特殊索道(スキーリフトなど)の2種に分けられる(鉄道事業法施行規則47条)。
最初のロープウェーは西ヨーロッパで開発された。日本には古くから藤づるで編んだ籠(かご)を用いるものがあったが、人力以外の動力を用いた近代的なロープウェーは、1890年(明治23)、栃木県の足尾銅山に架設された貨物輸送用のものが最初とされている。人を乗せるものとしては、1912年(大正1)、大阪の新世界に、娯楽場ルナパークと通天閣を結ぶ4人乗りロープウェーが開業したが、これは遊戯施設的なものであった。本格的な旅客用は、1927年(昭和2)開業した三重県矢ノ川峠(やのことうげ)の1254メートルのロープウェーが最初である。また、2014年(平成26)の時点で現存する日本最古の旅客用ロープウェーは、1929年に開業した奈良県の吉野ロープウェーで、2012年に機械遺産に認定されている。
ロープウェーの動力はケーブルカーと同様に山頂に設置する動力室のモーターで、ゴンドラには動力がない。モーターが巻上げ機を回し、曳索の両端のゴンドラを交互に上下させる形式を交走式という。交走式はゴンドラの大型化が可能で定員100人を超えるものもあり、時速も速いものでは40キロメートルに達する。構造が簡単で安全性も優れ急斜面に適応するが、ケーブルカーと同じく距離に限界があり、2~3キロメートルまでである。
これに対し、間隔を置いた多数のゴンドラが一定方向に次々に走行するのが循環式である。曳索が大きい輪になって同じ方向に絶えず動いており、ゴンドラに曳索を握ったり放したりする装置をつけ、地上の駅員が操作する。したがって時速は10キロメートル程度までで、ゴンドラも8人乗りくらいが限度であるが、乗客の多いときにはゴンドラを増やして輸送量を増加させることができる。急斜面には適さないが長距離の架設が可能である。
[吉村光夫]
『斎藤達男著『日本近代の架空索道』(1985・コロナ社)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…歯軌条式には480/1000(スイスのピラトス山)の特例もあるが,より急勾配な区間は鋼索鉄道の分野となる。近年,ロープウェーの建設技術が急速に進歩したため,工費の割高な登山鉄道の建設はほとんど行われていない。【中川 浩一】。…
…いずれも運賃その他一定の事項については認可が必要とされる。なお,一般の旅客,貨物の運送を目的としない専用鉄道については,鉄道事業法によって専用鉄道とされ,一定の技術上の基準に従うことが求められており,またロープウェーやスキーリフトについては,やはり鉄道事業法に基づく索道として規制されている。このほか,運送関係の規程を定めた鉄道営業法があり,また鉄道財団の成立とそれを目的にした抵当権設定の手続を定めた鉄道抵当法や,鉄道に対する助成,補償等の規程を盛りこんだ鉄道軌道整備法がある。…
※「ロープウエー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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