ワラスボ(その他表記)green eel goby
Odontamblyops rubicundus

改訂新版 世界大百科事典 「ワラスボ」の意味・わかりやすい解説

ワラスボ (藁須坊)
green eel goby
Odontamblyops rubicundus

スズキ目ハゼ科ワラスボ属の魚。インド,東南アジア,中国朝鮮半島に広く見られるが,日本では有明海のみに分布する。佐賀でジンギチと呼ぶ。体は細長く,ウナギ型をしており,背びれ尾びれしりびれが連なっていて境目がはっきりとしない。腹びれは左右が合して吸盤を形成する。頭にも体部にもうろこがない。眼が非常に小さく,皮下に埋没している。干潟の軟泥中に複数の出口をもった孔を掘り,その中に生息する。各孔道は互いに連絡し,最深部では垂直になる。産卵期は6~9月で,卵は長いナス形(2.3mm×0.7mm)をしており,1腹の卵数は6000~3万5000粒に達する。孵化仔魚(ふかしぎよ)は遊泳生活を送り,発達した眼をそなえているが,着底後しだいに退化していく。浮遊期にはアキアミ,橈脚(じようきやく)類(コペポーダ),成魚では二枚貝,小魚,エビ,イカなどを食べる。1年で全長18cmに達し成熟する。全長37cmに達するものもある。食用とするが,近縁チワラスボは体色が赤く食用としない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワラスボ」の意味・わかりやすい解説

ワラスボ
わらすぼ / 藁素坊
green eel goby
[学] Taenioides rubicundus

硬骨魚綱スズキ目ハゼ科に属する海水魚。体は円筒形で細長い。背びれ、臀(しり)びれ、尾びれは連結し、左右の腹びれは合して杯状をなす。目は退化して皮下に埋没している。両顎(りょうがく)には乱ぐい歯が並ぶ。鱗(うろこ)はごく小さい。体色は青紫色。全長35センチメートルに達する。日本、朝鮮半島、中国、台湾に分布。日本では有明(ありあけ)海のみに産する。河口部の軟泥底中に数個の入口をもったトンネルの巣孔(すあな)をつくり、その中に潜む。小魚、二枚貝、エビ類などの小動物を食べる。有明海での産卵期は6~9月。付着卵を産む。産卵習性は不明。全長3.5ミリメートルの大きさで孵化(ふか)した仔魚(しぎょ)は正常な目を備えており、河口域で浮遊生活を送る。2センチメートルほどの稚魚に成長したのち底生生活に入る。この発育期には目はすでに退化している。春から秋に各種の漁具でとられ、みそ汁の実や干し魚として食用にされる。

[道津喜衛]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワラスボ」の意味・わかりやすい解説

ワラスボ
Odontamblyopus lacepedii

スズキ目ハゼ科の海水魚。全長 30cm以上になる。体は長く,ウナギ形。腹鰭は吸盤になっている。下顎は上顎よりも突出する。目は退化しているが明瞭で皮膚に覆われている。体色は暗緑褐色。有明海八代海,九州西岸,朝鮮半島,中国,台湾に分布し,泥中に生息する。食用。干物にされる。

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