一字の師(読み)イチジノシ

デジタル大辞泉 「一字の師」の意味・読み・例文・類語

いちじ‐の‐し【一字の師】

鄭谷ていこくが、斉己さいきの詩の語句数枝開く」の一字を改めて「一枝開く」としたので、斉己は庭に降りて鄭谷を拝したという、「唐詩紀事」に見える故事から》詩文などを指導してくれた師。

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精選版 日本国語大辞典 「一字の師」の意味・読み・例文・類語

いちじ【一字】 の 師(し)

  1. ( 一字の誤読誤書、また詩の一字の不適当な表現を訂正してくれた恩人を呼んだ「唐摭言‐切磋」に見える李相の故事などによる ) 一文字の教えを受けた師。また、詩文などを添削し指導してくれた人。
    1. [初出の実例]「一字の師匠なりとも、芳恩謝徳のこころざしをつねに持べし」(出典:随筆・戴恩記(1644頃)上)

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故事成語を知る辞典 「一字の師」の解説

一字の師

一文字の教えを受けた師。また、詩文などを添削し指導してくれた人。

[使用例] 識者もし嘲噱あざけりの唇を転じて一言一字の師となられもせば、まこと編者本意にして、幸いこよのうも侍らむかし[坪内逍遥小説神髄|1885~86]

[由来] 九世紀の終わりごろ、唐王朝の末期の中国でのこと。せいという人が、早咲きの梅をうたった「昨夜、数枝開く」という詩句を、ていこくという詩人に見せたことがありました。すると、鄭谷は、「数枝」では早い感じがしないから「一枝」にした方がいい、と助言しました。これにすっかり感服した人々は、鄭谷を「一字の師」として尊敬したのでした。以上は、「詩人ぎょくせつ」という書物に載せる話。ほかにも、「唐摭言」「鶴林玉露」などの書物に、似たような話が記録されています。

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