一幕物(読み)ひとまくもの(英語表記)one-act play

精選版 日本国語大辞典 「一幕物」の意味・読み・例文・類語

ひとまく‐もの【一幕物】

〘名〙 演劇形式の一つ一幕で完結している戯曲・演劇。
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉六「余り長たらしくて毒悪なのはよくないと思って、一幕物にして置いた」

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デジタル大辞泉 「一幕物」の意味・読み・例文・類語

ひとまく‐もの【一幕物】

一幕で完結する演劇。

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改訂新版 世界大百科事典 「一幕物」の意味・わかりやすい解説

一幕物 (ひとまくもの)
one-act play

一幕劇ともいう。通常は,単一の劇的行動を扱い,場面が変化せず,休憩なしに上演される比較的短い劇を指すが,これらはいずれも絶対条件ではない。例えばギリシア悲劇やシェークスピア劇は休憩なしに演じられ,相当の長さをもち,ことに後者は複合的な劇的行動を扱うので,一幕物とは呼ばれない。他方,いわゆる一幕物の中にも場面の転換を含むものがある。普通に一幕物と呼ばれるのは近代以後の産物で,空間を限定し,連続した時間のうちに現実の断片を提示しようとするもので,多幕物のもつ規模を欠くかわりに,劇的緊張や密度において優れる。A.P.チェーホフ,J.A.ストリンドベリ,G.B.ショー,J.M.シング,E.G.オニール,T.ウィリアムズなどの作品がその例である。E.イヨネスコやS.ベケットなど,いわゆる不条理劇の作家にも一幕物が多いが,これは多幕物に不可欠な因果律によって成り立つプロットを組み立てにくいためである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「一幕物」の意味・わかりやすい解説

一幕物
ひとまくもの
one-act play

戯曲の一種で,幕間なしで演じられるものをいう。いくつかの場面に分れていることもあるが,普通は同じ場面で連続して起る事件を扱い,その構成も比較的単純である。時間と空間の枠を厳密に定める近代劇が確立してから,特に明らかになった概念。シェークスピア劇などはもともと幕間なしに演じられてはいたが,時間や空間の飛躍を多く含むので一幕物とは呼ばない。

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