一時保護(読み)イチジホゴ

デジタル大辞泉 「一時保護」の意味・読み・例文・類語

いちじ‐ほご【一時保護】

児童相談所長または都道府県知事が必要と認めた場合に、子供一時保護施設などに短期間入所させること。期間は2か月以内。棄児・迷子や家出した子に保護者がいない場合や、親の虐待放任により緊急に子を家庭から一時的に引き離す必要がある場合などに行われる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

共同通信ニュース用語解説 「一時保護」の解説

一時保護

子どもの安全確保のため児童相談所長や都道府県知事が必要と判断した場合、子どもを一時的に親元から引き離して保護できる。保護の期間は原則2カ月までとなっており、親の意向に反して継続する場合は家庭裁判所承認を得る必要がある。家裁決定が確定するまでの間も保護を続けられる。対象となった子どもは、一時保護所や、児童養護施設乳児院などが受け入れる。

更新日:

出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「一時保護」の意味・わかりやすい解説

一時保護
いちじほご

子供の生命の安全を第一に、子供の権利尊重や自己実現にとって明らかに見逃すことのできない状況にあると判断されるとき、児童福祉法第33条に基づいて、児童相談所長や都道府県知事などの承認を得て児童相談所が子供を一時的に保護すること。以下のようなケースに実施される。(1)緊急保護 置き去りや迷子、家出した子供など、適当な保護者や宿所がなく、保護を必要とする場合。(2)行動観察 援助指針を判定するため、行動観察や生活指導を行う必要がある場合。(3)短期入所指導 短期間の心理療法カウンセリング、生活指導などが有効と考えられ、地理的に遠隔または生活環境、子供の性格などの理由から、ほかの方法では援助が困難な場合。

 一時保護の対象となる子供の年齢は、乳幼児から17歳までである。保護の要否判断には、子供や家族へ多大な影響が及ぶことを考慮して、担当児童福祉司個人による判断であってはならず、児童相談所としての機関決定や、必要な場合には、外部との連携も含めた客観的、合理的な決定が求められる。的確な評価のためには、日ごろからの情報収集とともに、リスクアセスメントシートなどを用いた情報整理が不可欠である。

 一時保護の対象とされた子供は、一時保護所において保護される。また、夜間や、児童相談所から遠隔の場所において虐待事例が発生した場合や、対象となる子供が自立していない乳児であったり、自傷や他害などの問題行動をおこす場合など、やむをえない状況下で一時保護が必要とされる場合には、警察署や児童福祉施設、医療機関、里親、保育所の保育士、学校の教員などの適当な機関や私人などに一時保護を委託することができる。これを委託一時保護という。一時保護は目的を達成するための必要最小限の期間において実施され、児童福祉法ではその期間を、原則として2か月を超えてはならないと規定している。また、一時保護は原則として子供や保護者の同意を得て行われるが、通常の施設入所とは異なり、保護者の同意を要件とはしていない。そのため、虐待などで緊急を要する場合には、行政権限において一時保護を決定することができる。これを職権による一時保護という。ただし、保護者には行政不服申立て権があるため、児童相談所は保護者に対して一時保護の事実を告知する必要があり、その際には一時保護所の所在地を記載することが原則となっている。また(虐待が疑われるためなど)職権による一時保護が2か月を超えて行われる場合には、児童相談所は家庭裁判所に申し出て、承認を得ることが義務づけられている。一時保護した子供の退所は、保護者などの事情聴取や必要な調査と判定を経て、保護の目的が達成された場合には、速やかに行われる必要がある。

[編集部 2019年9月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の一時保護の言及

【更生保護】より

…さらにその決定の審査を行う機関として,法務大臣が両議院の同意を得て任命する委員長と委員4人で構成される中央更生保護審査会がおかれている。更生緊急保護は,帰住のあっ旋,金品の給与または貸与等を行う一時保護と一定の施設に収容して必要な教養,訓練,医療,保養,就職を助け,環境の改善調整を図る等の継続保護があるが,本人の申出により,刑事施設からの釈放後6ヵ月の範囲内で,保護観察所の長がみずから行うか,更生保護事業法の規定により更生保護事業を営む者に委託して行われる。 第2次大戦後,刑罰思潮において,犯罪者の改善,更生をはかり,社会復帰を促進することが刑罰の目的の一つであるとする処遇思想の高まりとともに,そのためには,施設拘禁よりもできるだけ自由社会において生活させ補導,援護をはかることが効果的であるという社会内処遇を重視する考え方が伸長してきているといってよい。…

※「一時保護」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

大臣政務官

各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...

大臣政務官の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android