社会福祉施設の一つで、児童の福祉を保障するための施設をいう。児童福祉法(昭和22年法律第164号)第7条および第35~44条に、以下の12施設が規定されている。
(1)助産施設 保健上必要があるにもかかわらず、経済的理由により、入院助産を受けることができない妊産婦を入所させて、助産を受けさせることを目的とする施設。
(2)乳児院 乳児(保健上、安定した生活環境の確保その他の理由によりとくに必要のある場合には、幼児を含む)を入院させて、これを養育し、あわせて退院した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設。
(3)母子生活支援施設 配偶者のない女子またはこれに準ずる事情にある女子およびその者の監護すべき児童を入所させて、これらの者を保護するとともに、これらの者の自立の促進のためにその生活を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設。
(4)保育所 保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者のもとから通わせて保育を行うことを目的とする施設(利用定員が20人以上であるもので、幼保連携型認定こども園を除く)とする。保育所は、前項の規定にかかわらず、とくに必要があるときは、保育を必要とするその他の児童を日々保護者のもとから通わせて保育することができる。
(5)幼保連携型認定こども園 義務教育およびその後の教育の基礎を培うものとしての満3歳以上の幼児に対する教育(教育基本法第6条第1項に規定する法律に定める学校において行われる教育をいう)および保育を必要とする乳児・幼児に対する保育を一体的に行い、これらの乳児または幼児の健やかな成長が図られるよう適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする施設。幼保連携型認定こども園に関しては、この法律に定めるもののほか、認定こども園法の定めるところによる。
(6)児童厚生施設 児童遊園、児童館など、児童に健全な遊びを与えて、その健康を増進し、または情操を豊かにすることを目的とする施設。
(7)児童養護施設 保護者のない児童(乳児を除く。ただし、安定した生活環境の確保その他の理由によりとくに必要のある場合には、乳児を含む)、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設。
(8)障害児入所施設 障害児を入所させて支援を行うことを目的とする施設。障害児入所施設は2種類あり、一つは福祉型障害児入所施設で、保護、日常生活の指導および独立自活に必要な知識技能の付与を目的とする施設である。もう一つは医療型障害児入所施設で、保護、日常生活の指導、独立自活に必要な知識技能の付与および治療を目的とする施設である。
(9)児童発達支援センター 障害児を日々保護者のもとから通わせて支援を提供することを目的とする施設。児童発達支援センターは2種類あり、一つは福祉型児童発達支援センターで、日常生活における基本的動作の指導、独立自活に必要な知識技能の付与または集団生活への適応のための訓練を目的とする施設である。もう一つは医療型児童発達支援センターで、日常生活における基本的動作の指導、独立自活に必要な知識技能の付与または集団生活への適応のための訓練および治療を目的とする施設である。
(10)児童心理治療施設 環境上の理由により社会生活への適応が困難となった児童を、社会生活に適応するために必要な心理に関する治療および生活指導を主として行うことを目的とする施設。
(11)児童自立支援施設 不良行為をなし、または、なすおそれのある児童および家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入所させ、または保護者のもとから通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設。
(12)児童家庭支援センター 地域の児童の福祉に関する各般の問題につき、児童に関する家庭その他からの相談のうち、専門的な知識および技術を必要とするものに応じ、必要な助言を行うとともに、市町村の求めに応じ、技術的助言その他必要な援助を行うほか、児童福祉法に規定される指導を行い、あわせて児童相談所、児童福祉施設等との連絡調整その他厚生労働省令の定める援助を総合的に行うことを目的とする施設。
児童福祉施設の設備および運営については、都道府県が条例で基準を定めることになっている(児童福祉法45条)。ただし、児童福祉施設に配置する従事者およびその員数、居室および病室の床面積などについては、「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」(昭和23年厚生省令第63号)に定める基準に従って定めることとなっている。また、設備および運営に関する基準は、児童の身体的、精神的および社会的な発達のために必要な生活水準を確保するものでなければならないと定められている(児童福祉法45条)。
[中村強士 2023年11月17日]
〈児童福祉法〉(1947公布)では助産施設,乳児院,母子寮,保育所,児童厚生施設,養護施設,精神薄弱児施設,精神薄弱児通園施設,盲ろうあ児施設,虚弱児施設,肢体不自由児施設,重症心身障害児施設,情緒障害児短期治療施設,教護院の14種類の施設を児童福祉施設としており(7条),その第3章にそれぞれの目的と機能が定められている。児童厚生施設には児童遊園と児童館,盲ろうあ児施設には盲児施設,ろうあ児施設がある。法制定時は,児童福祉施設は助産施設,乳児院,母子寮,保育所,児童厚生施設,養護施設,精神薄弱児施設,教護院,療育施設の9施設であったのが,その後,療育施設が細分化されたり,新たに専門分化して整備されてきてこの体系となった。また児童福祉施設最低基準(1948年厚生省令)では,上記の施設をさらに細分し(助産施設を第一種,第二種に分け,乳児院のもとに乳児預かり所を,精神薄弱児施設のもとに第一種,第二種の自閉症児施設を,ろうあ児施設にもとに難聴幼児通園施設を,肢体不自由児施設のもとに肢体不自由児通園施設,肢体不自由児療護施設を分出),それぞれの設備および運営についての最低基準を定めている。
1997年に児童福祉法の一部が改正され,98年度から一部施設の名称と機能の見直しがなされる。見直しの対象は,母子寮,養護施設,虚弱児施設,教護院である。母子寮が母子生活支援施設,養護施設が児童養護施設,教護院が児童自立支援施設とそれぞれ改まることとなった。虚弱児施設は児童養護施設とみなすこととなった。新たな児童福祉施設として児童家庭支援センターが創設され,児童福祉施設に附置するものとなった。乳児院と情緒障害児短期治療施設は名称の変更はなかったが,乳児院の入所乳児について,保健上その他の理由により特に必要のある場合には,〈おおむね2歳未満の幼児を含む〉と明確になり,情緒障害児短期治療施設は〈おおむね12歳未満まで〉が削除された。今回の児童福祉法の一部改正は,少子化の進行,家庭と子育て機能の低下等児童および家庭を取り巻く環境の変化に対応し,児童の福祉の増進を図る観点からの見直しである。
これらの施設入所にあたっては,保育所は市町村(特別区を含み,措置権の委任を受けた福祉事務所長を含む),助産施設,母子寮は,都道府県,市および福祉事務所を設置する町村(措置権の委任を受けた福祉事務所長を含む),これらを除く児童福祉施設(児童厚生施設を除く)は,都道府県(指定都市を含み,措置権の委任を受けた児童相談所長を含む)が行っている。なお今回の一部改正で保育所への入所の仕組みは,情報の提供に基づき保護者が選択する仕組みに改まることとなった。
児童福祉施設は,1995年10月現在で,全国で約3万3000ヵ所,入所人員は約175万人,職員数約43万人。保育所は児童福祉施設総数の約67.7%を占める。また児童福祉施設総数の公私立の割合は約68%が公立,約32%が私立。施設に要する費用は措置費(公費)と徴収金等から成り立っている。
→児童福祉
執筆者:永田 幹夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
… 専門機関としては,児童福祉処遇の基盤となる判定,相談,指導,一時保護を業務とする児童相談所と,施設機関への措置権をもち,調査や送致を実施する福祉事務所,ならびに児童にかかわる諸般の保健援助を実施する保健所がある。また,児童福祉法は以下の施設を児童福祉施設としている。(1)助産施設,(2)乳児院,(3)母子生活支援施設(旧母子寮),(4)保育所,(5)児童養護施設(旧養護施設),(6)精神薄弱児施設,(7)精神薄弱児通園施設,(8)盲・ろうあ児施設,(9)肢体不自由児施設,(10)重症心身障害児施設,(11)情緒障害児短期治療施設,(12)児童自立支援施設(旧教護院),(13)児童家庭支援センター,(14)児童厚生施設(児童館,児童遊園等)。…
※「児童福祉施設」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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