親の死亡や経済的な事情、虐待などの理由により、家庭で暮らすのが困難な子どもを、保育士や児童指導員らが育てる施設。児童福祉法に基づき、全国に約600カ所ある。原則として18歳未満が対象で、厚生労働省によると、昨年3月時点で約2万5千人が入所している。
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児童福祉法(昭和22年法律第164号)の規定に基づいて設立された児童福祉施設の一つ。同法第41条では「保護者のない児童(乳児を除く。ただし、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には、乳児を含む)、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設とする」と規定されている。
1947年(昭和22)の児童福祉法制定時は養護施設とよばれていたが、1997年(平成9)の児童福祉法第五〇次改正により児童養護施設に改称され、あわせて虚弱児施設が児童養護施設に統合された。児童養護施設は、歴史的には「孤児院」とよばれることが多かったが、いまは下記にあるとおり虐待を理由に入所するケースが多い。
被虐待児の増加により、児童養護施設の役割が、できるだけ家庭に近い雰囲気のなかで、児童の社会的自立能力を育むことや、社会生活を送るうえでのアフター・ケアなどによる自立支援が強調されるところとなった。また、乳幼児に対する養護の連続性の観点から児童養護施設でも乳児を受け入れることができるようになっている。2020年(令和2)3月時点の全国の児童養護施設数は612か所、入所定員は3万1494人、在籍人員は2万4539人となっており、在籍率は77.9%である。
児童養護施設に関しては、数年ごとに厚生労働省による「児童養護施設入所児童等調査」が実施されてきた。2018年(平成30)の調査の結果によると、おもな入所理由(調査では「養護問題発生理由」)は、(1)父母の虐待・酷使(22.5%)、(2)父母の放任・怠惰(17.0%)、(3)父母の精神疾患等(15.6%)、となっており、虐待を理由にした入所が多く、被虐待経験の割合は65.6%となっている。しかし、家族との交流については帰省や面会を通じて行われており、交流がない児童は19.9%にすぎない。また、アフター・ケアにかかわるものとしては、中学3年生の86.7%が高等学校(各種学校)への進学を、高校3・4年生の27.3%が大学(短大)への進学をそれぞれ希望している。
児童養護施設は、「ケアの小規模化」の観点から「地域小規模児童養護施設」が推進されている。地域小規模児童養護施設とは、家庭的環境のもとで養育することが適切な児童を対象に、本体施設の支援のもと、地域社会の民間住宅を活用して、近隣住民との適切な関係を保持しつつ、家庭的な環境のなかで養護を実施することにより、入所している児童の社会的自立を促進するものである。2021年10月の時点で527か所ある。また、本体施設においても同様の観点から「小規模グループケア」が進められており、2197か所ある。さらに、現代の子育てが困難な状況にこたえるために、地域の児童を、親が病気であるなどの理由により一時的に預かる子育て短期支援事業(ショートステイ、トワイライトステイ)も実施しているところがある。
[中村強士 2023年11月17日]
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(中谷茂一 聖学院大学助教授 / 2007年)
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